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シュターミッツ一族と言えば、18世紀を代表する音楽一家として高名だけれども、バッハ一族のヨハン・セバスチャンやカール・フィリップ・エマニュエル、ヨハン・クリスティアンのような後世になっても人気の衰えない作曲家がいない。そのせいで、カールだの、ヨハンだの言われてもピンとこない。これはシュターミッツ一族と同じボヘミア出身のベンダ一族にも同じことが言える。個人と言うよりも、ざっくり○○一族なんだよなぁ、さほどはまっていない人にとっては。

と言う前振りがあって…今回は、ヨハン・シュターミッツ。最近リリースされたヴァイオリン・ソナタ集を聴いている。

ヨハンは、シュターミツ一族の長ともいうべき人物。ボヘミアに生まれ、プラハで音楽教育を受け、後にマンハイムの宮廷楽長に迎えられている。当時のマンハイム宮廷は、プファルツ選帝侯カール4世フィリップ・テオドールの下で、各地から優秀な音楽家が招聘されており、当時のヨーロッパにおいて最高水準の宮廷楽団であったと言われる。こうした恵まれた環境の中で、ヨハンはその才能をいかんなく発揮し、活躍した。演奏の面では優秀なヴァイオリニストとして、そして、作曲家としては、マンハイム楽派の創始者として知られることとなる。

ヨハンが創設したマンハイム楽派は古典派の初期において、もっとも影響力のある一派とされている。例えば、古典派の交響曲は、器楽曲において一般的だった急-緩-急にメヌエットが加えられているが、これを始めたのはマンハイム楽派である。ヨハンの交響曲は必ずこの形になっている。また、ソナタ形式の確立にも大きな役割を果たすなど、その存在感は大きい。モーツァルトも就職活動を目的にマンハイムに訪れ、その場で少なからぬ影響を受けている。

このように交響曲の発展に大きな寄与をしたヨハンであるが、今回は、前述のとおり、ヴァイオリン・ソナタ。作品6に収められた6曲が収録されている。いずれの作品も、アダージョ-アレグロ-メヌエットの形を取っている。少し変わった形だが、メヌエットが入っているあたりに古典派らしさを感じる。そして、決まりきったことをきちんとやる。変なことをしない安定感。これって、古典派が安心して聴ける要因であり、退屈感を感じさせる要因である。こんなこともマンハイム楽派由来なのかもしれない。

曲はいたって、優雅。バロック(歪んだ真珠)からの脱却を強く感じさせる。まったりとした貴族の居間の雰囲気が、部屋いっぱいに広がる。クラシック=オシャレを楽しみたい人には、何気に向いているような気がする。つっても、結構マニアックな世界だけれども。

奏者は、ムジカ・アンティクァ・ケルンでコンサートマスターを務めていたこともあるシュテファン・シャルト。モダン楽器とオリジナル楽器を弾き分ける両刀使いだけれども、当然今回の録音ではオリジナル楽器を使用している。出身楽団を見るととても、落ち着いた演奏をしそうにないんだけれども、曲の持っている優美な響きを大切にした演奏だ。レーベルはMDG。お得意のSACDハイブリッド盤。SACDの装置を未だに持っていないのって、やはり良くないなぁ。



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無伴奏ヴァイオリンのための24のカプリースと言えば、パガニーニの名曲。名盤も多い。しかし、つい先日、フランスの若手ヴァイオリニスト、ガブリエル・チャリックの演奏でリリースされた無伴奏ヴァイオリンのための24のカプリースは、なんと、ロカテッリのものだ。

ロカテッリの24のカプリースは、ヴァイオリンの技法op.3に収められた12のヴァイオリン協奏曲のためのカデンツァ集である。ヴァイオリンの名手として知られたロカテッリのヴァイオリン協奏曲には、ヴァイオリンの独奏による長めのカデンツァが第1楽章と第3楽章に含まれている。12曲あって、それぞれに2つのカデンツァ、12×2=24のカプリースと言うことになる。バロック期の曲集はなぜ、12曲でまとめられているのだろう?と言うこの曲固有ではない疑念はあるものの、これで数字は納得がいく。12のヴァイオリン協奏曲+24のカプリースだから13曲じゃない?と言う細かい突込みはなしだ。

で、さて、ロカテッリのヴァイオリン協奏曲だけれども、ヴァイオリンの技法op.3では、コレッリ形式の緩-急-緩-急ではなく、ヴィヴァルディ形式の急-緩-急の形式を取っている。バロック後期の作曲家であり、ヴァイオリンの技法op.3が1733年に出版されたことを思えば、一般的な形式と言えるのだろう(多分)。で、第1楽章と第3楽章にカデンツァ、要するに急楽章用なのだ。と言うことは、このカデンツァ、全部早い!パガニーニの24のカプリースだってゆっくりした曲があるというのに…。

しかも、だ。今日の技術をもってしても、演奏困難な部分がある上に、当時の楽器では、弾くことが出来ない高音が使われているなど、超絶技巧に加えて、謎が多い曲なのだ。

この難曲中の難曲、カプリースだけで演奏されることは多いものの、全曲を完全な形で録音したヴァイオリニストはいなかった。今回のチャリックによる演奏は、世界初となる貴重な試みだ。こういうチャレンジャー精神に充ち溢れているのは、古楽奏者に多いが、チャリックはモダン楽器での挑戦となっている。それに、バロック音楽がオリジナル楽器で演奏されることが一般的になった今日ではこういう珍しいバロック音楽をモダン楽器で演奏すると言うだけで、どこか斬新なような印象を受けてしまう。

演奏技術はさすが。高音でもしっかりとした音程で凛とした響きを持って弾き切っている。心地よくきりきり舞いさせてくれる。この研ぎ澄まされた感覚、今後も期待できる若手ではないだろうか。と、持ち上げつつ、マンゼの演奏で聴いてみたい、なんて、失礼なことを思ってしまったりする(笑)。巨匠崇拝が抜け切らぬとは情けないものだ(汗)。でも、これがきっかけになっていろんな人の録音が出てきたら、間違いなく嬉しい。バロック・ヴァイオリンでも聴いてみたいよね。



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ニコラス・アクテン&スケルツィ・ムジカーリが、ドイツ・ハルモニア・ムンディにデビュー。これまでは、αレーベルを中心にリリースしていたこのコンビが、古楽レーベルの雄に移籍して、どんな企画を進めるか、とっても楽しみ。DHMならお財布にも優しい。

さて、今回のデビュー作だけれども、タイトルはIl Pianto d'Orfeo、サブタイトルにor The birth of Operaとなっている。『オルフェオの嘆き』(またはオペラの誕生)と言ったところか。オルフェオ伝説を題材にしたイタリア初期バロックの作品集だ。この時代の作品は、オペラの誕生と重なる。バロックの始まりは、オペラの始まりであり、それはイタリアから始まったのだ。そして、モンテヴェルディのオペラ『オルフェオ』に代表されるようにオルフェオを題材にした作品が多かったようである。

CDで聴き始めて、ふと気が付く。「ん?聴いたことあるぞ…」このマニアックな選曲、とてもほかのCDで聴いていて覚えているわけないよなぁ。なんて暢気なことを考えていたんだけれども、実は夏のヨーロッパ音楽旅行でこのプログラム聴いているんだった(汗)。そりゃ、知っているわ。フランクフルトから近郊電車で30分、バッド・ソーデンと言う駅から更に2㎞ほど離れたところにある閑静な住宅街の一角にある小さな教会で、このプログラムのコンサートを聴いた。

アクテンの柔らかく優しい歌声が小さな空間に広がっていく至福。時折外の騒音に邪魔されたけれども、それもまた一興。テオルボを抱えて歌うその姿は、まさに現代のオルフェオとでも言いたくなるもの。

夏のあの日のあのコンサートの思い出を収めたCD…あ、これは完全に個人の感傷なんだけれどもね(汗)。それは別にしても、アクテンの歌声、それにコルソンのコルネットをはじめとするアンサンブルは素晴らしい。まだまだ若い団体だけに今後が楽しみだ。来日は…あるのかなぁ?


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唱歌 Japanese Children Songs と言うタイトルのCDがリリースされた。何となくありがちなタイトルのCDなんだが、演奏者が凄い。ディアナ・ダムラウをソリストに迎えて、ケント・ナガノ率いるモントリオール交響楽団とモントリオール児童合唱団が共演する。

西洋音楽のビックネームが本気で日本の児童用唱歌に取り組んだ一風変わった企画だ。しかも、これ、日本人向けに作ったCDではなく、あくまでも、輸入盤(国内発売用の帯はついているけど)。解説にも、日本語はない。歌詞の対訳は何故か全てひらがな。

この企画の発案者は、もちろん、ケント・ナガノ。日系アメリカ人であることはよく知られており、妻も日本人のピアニスト、児玉麻里さんだ。妻が娘のために歌っていた日本の唱歌を聴いて、この企画を思いついたのだという。随分前に思いついた企画と言うことになるが、このたび、ダムラウと言う最高の協力者を得て、漸くCDとなった。なお、オーケストレーションは、ジャン=パスカル・バンテュスと言うグラミー賞受賞のフランス人。

さて、西洋人が歌う日本の歌、どんなものだろうか。以前3大テナーが来日した折、最後に日本の歌を歌っていたのを聴いたことがあるけれども、変な発音で、取ってつけ感が漂う酷いものだった。

それが記憶にあったので、今回もあまり期待していなかったのだけれども、さすがにそんな恥ずかしいものをCDにするわけがない。ダムラウの声は、透明感と温かみがあって、とても美しい。1曲目の「七つの子」から、発音の美しさと相俟って、とても素晴らしい演奏になっている。編曲は何となくぼんやりとしていて、ディーリアスっぽい。日本の哀愁を感じさせるにはぴったりのような気もする。

私たち日本人が、幼少の頃より馴染んできたあの歌、ヨーロッパの人気オペラ歌手が歌うとこうなります、と言ういい見本。正直、綺麗すぎて、ちょっと遠い存在になってしまうのが残念なところか(汗)。こんな風には絶対に歌えません、と。



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パパと言えば、作曲家ではハイドン、指揮者ではモントゥーだ。J.S.バッハが父と言われるのとは実に対照的。優しい父親を見るような尊敬と親しみを込めてこう呼ぶのだろう。

パパがパパを振るのは何となく似合いそうな気がするのだけれども、パパによるパパの録音は意外と少ない。最近はいささかネタが枯渇気味なのか、その傾向は薄れてきたけれども、ちょっと前までは、過去のライヴ録音がわさわさリリースされていたので、その中にいくつかあったかもしれない。そこは確認していないけれども、メジャーレーベルに録音された正規のものは1種類しかないとされている。1959年にウィーン・フィルと録音した交響曲第94番『驚愕』、同第101番『時計』である。

で、この録音が、タワーレコードのオリジナル企画で復活した。ヴィンテージ・コレクションと言うもので、発売当時のジャケットデザインを用いている。つっても、あんまりカッコいいもんじゃないんだけれどもね。

演奏はやっぱりぴったり。パパの演奏するパパにはどことなく、温もりとユーモアがある。ハイドンの古い録音はドイツ・ロマン派的な“曲解”があるようで、堂々としすぎた録音が多いんだけれども、パパは、それを感じさせない。もちろん、今日的な尖った演奏ではないのだが、その代表的なミンコフスキの演奏とその洒脱感を比べると面白いと思う。例えば、『驚愕』の2楽章、ミンコフスキーは本気で脅かしにかかっているけれども、パパの演奏は、いないいないばぁをしているような滋味がある。まさに、パパだ。ハイドンの音楽にあるお茶目さをよく表現してくれている。

ウィーン・フィルの柔らかい音色もこの演奏にはぴったりだ。ハイドンはウィーンの作曲家だし、ウィーン・フィルには名演が多くて当然のような気がするのだけれども、ハイドンの名盤は悉くほかの楽団に持って行かれてしまっている。これが唯一の名盤、とは言い過ぎかな?

なお、古い録音だが、幸いにして良質なステレオ録音で残されているので、聴き難さは一切ない。DECCAに感謝しながら聴こう。カップリングのシューベルトの『ロザムンデ』も好演。今更ながらのモントゥーだが、素晴らしいCDだ。


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ウィーンと言えば音楽の都。しかし、ウィーンが音楽の都と呼ばれるようになったのは、古典派で3人のビックネームが活躍して以降のこと。それより前の時代では、ウィーンは決して音楽先進地域ではなかった。

そんな音楽の都の前時代を積極的に掘り下げて活動しているヴァイオリニスト、グナール・レツボールが新たに興味深いCDをリリースした。タイトルはEx Vienna、サブタイトルにAnonymus-Habsburg violin musicとある。レーベルはPan Classics。輸入元のマーキュリーが日本語解説を付けてくれているお高いCDだ。この日本語解説によるタイトルは『ヴァイオリン×バロック×ウィーン』、「17世紀オーストリア、作曲者不詳の傑作8編」となっている。

これはウィーンのコンヴェンツァル聖フランチェスコ会修道院にXIV-726と言う写本番号で所蔵されていた楽譜帳に収録されていた作品のうち作者不詳の曲ばかり8編を録音したものだ。XIV-726には、これら作者不詳の曲のほか、ビーバーやシュメルツァーと言った当時の名匠の作品、さらには現在ではその詳細も定かではない作曲家の作品も収められている。作曲者不詳の作品については、なぜ作曲者の名前が記されなかったかはわからないが、レツボール自身の憶測では、もしかしたら、この写本の製作者自身ののものかもしれない、としている。

いずれにせよ、このXIV-726に収録されている曲はすべてヴァイオリンのための曲であり、しかも、ヴァイオリニストの技量をひけらかすような技巧的な作品が多いという。このCDで聴くことのできる8編にしても、なかなか一筋縄にはいきそうにない曲ばかりだ。

それにしても、このCDを聴いていて思うことは、これほどの曲がなぜ、「作者不詳」なのか、と言うことだ。この答えは、レツボール自身による解説書に事細かに書かれている。詳細は書かないが、要するにこの頃の音楽家たちは、「著作権」に対する意識が異常に低かった、と言うところに起因するらしい。例えば、ブタペストで入手した作品をウィーンに持ってきて、「これ、俺の作品です」と言ってしまえば、そうなってしまう。馬車と徒歩で移動していた時代では、都市間の人の行き来は決して多くなく、その「嘘」を見破る術もなかったというわけだ。

そういうこともあってか、作曲者の存在はいたって軽く扱われていた。音楽が良ければ誰の作曲かなんてことはどうでも良かったのだろう。

今日、例えば、ロマン派の有名作曲家の作品であれば、未熟な駄作であったとしても、録音され世界中の音楽ファンのもとに届けられる、そんな状況とは全く正反対な純粋に音楽のみを評価する時代だったと言えるのかもしれない。

そんな時代の一部を切り取ったこのCDの中で、とにかく、インパクトが強いのが第69曲 郵便馬車の角笛だ。優しいメロディと叩きつけるようなリズムが錯綜する強烈な音楽だ。この時代の郵便馬車ってどんなだったかは知らないけれども、何かが違うような気がしてしょうがない。モーツァルトのポストホルン・セレナーデのイメージがあればなおさらだ。あ、モーツァルトのもポストホルンが出てくる前後は妙に堂々としていて偉そうだな…。それにしたって、普通に考えても、こんな過激に郵便配達されたらたまらないだろう。

もっとも演奏者がレツボールだからなぁ。ほかの曲も痛快にダイナミックな演奏を披露してくれている。初録音のものばかりかもしれないけれども、相変わらず、ものすごく癖のある演奏。これしか演奏がなければこれがスタンダードになる。うはぁ…。



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ヴォーン・ウィリアムズはとってもローカルな作曲家である。ラヴェルに師事しているにも拘らず、あまりにもイギリス色が強いのだ。そう言う意味では、国民楽派的な作曲家と言えるかもしれない。それが魅力ではあるんだけれども、ほかの地域での受容が進んでいるとは言い難い。

出てくる録音もほぼイギリスのオーケストラによるものばかり。イギリス以外の国のオーケストラが演奏している場合であっても指揮者はイギリス人。これまで自分が知っている録音はすべてそうだった。

が!ここにきて、想像もしなかった国のコンビによる交響曲全集がリリースされた。ロジェストヴェンスキーとソヴィエト国立文化省交響楽団によるもの。もちろんメロディア。

ロジェストヴェンスキーは言わずと知れたロシアの名(迷)指揮者。BBC交響楽団を中心に長くイギリスで活躍していたので、一応、ヴォーン・ウィリアムズへの理解があり、ライヴだが録音も残っている。

ソヴィエト国立文化省交響楽団は、1982年に全連邦オペラ・シンフォニー・オーケストラを再編成する形で結成されたオーケストラ。国内の有名オーケストラから優秀な演奏家を引き抜いて結成された、当時のスーパー・オーケストラだった。その名が示す通り社会主義らしい国家の手厚い保護のもと、活発な活動を行っていたが、ソ連の崩壊と共にロジェストヴェンスキーが活動の拠点を海外に移し、これをきっかけにこの名称での活動を停止している。その後、モスクワ・シンフォニエッタ・カペレと言う名前で、形を変えて活動は続けられたものの、録音もなく低迷した時期を送った。現在はロシア国立シンフォニー・カペレと言う名称に変えて活動を続けており、ロジェストヴェンスキーの後を受けたポリャンスキーと共に、シャンドスに録音をするまでに復活を遂げている。どういうわけか、シャンドスの表記ではロシア国立交響楽団とされているが、例の有名楽団とはもちろん別物である。

さて、この録音。時期は、1987~1989年。当然ステレオではあるものの、アナログ録音と言うのがソヴィエトっぽいところ。そして、なぜかライヴ。ヴォーン・ウィリアムズの交響曲全集をライヴ録音したのって、このコンビがはじめてじゃないだろうか。いや、そんなことよりも、ソヴィエト人にヴォーン・ウィリアムズを聴かせるって…しかも、交響曲チクルス。ロジェストヴェンスキーは何をしたかったのだろう(笑)。

この全集が何時リリースされたのかはわからないけれども、ここ20年ほどはリリースがなかったと思う。ただ、何故か、海の交響曲(第1番)だけはイギリスのOlympiaからリリースされていた。これはなかなか個性的な演奏で知られており、あれこれと探して入手したものである。

今回のリリースでは、ロンドン交響曲(第2番)以降も聴くことができる!さっそく、何曲か聴いてみる。一言でいうならば、やはり、個性的。イギリスの風情なんてものは、どっかに置き忘れてきたような演奏。そりゃ、こっちだって、そんなもの期待してはいないわけだけれども(笑)。例えば、ロンドン交響曲。ちっともロンドンの風情が感じられない。鉄のカーテンの向こう側の聴衆を相手にして、ロンドンの情緒を語ったってしょうがない。じゃぁ、好きにやらせてもらう、って感じだろうか。曖昧模糊としない輪郭のはっきりとしたメリハリの利いた演奏だ。朝の靄なんて存在しない。田園交響曲(第3番)も同じ調子で進めていく。ヴォーン・ウィリアムズを退屈に感じる人には良いのかもしれない。ヴォーン・ウィリアムズ好きにとっても新しい発見のある演奏だ。第6番のようなイギリス的ではない作品では、余計な先入観なくロジェストヴェンスキー節を楽しめばいいだろう。

それにしても、オーケストラが上手いのがなんだか、悔しい(笑)。なんだかんだ言っても、この迷盤の復活は喜んでいい。やっつけ感漂うジャケットにイギリス感が全くないのもまたご愛嬌だろう。



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5月に入って、あまりCDを買っていない。GWで他に気を取られていたというのもあるかもしれないし、興味深い新譜が少なかったというのもあるかもしれない。何にせよ大人しくしていたことは確かだ。少ない、とは言え買っているんだけれどもね(汗)。

そんな中から1枚。ヨゼフ・スーク、ヤーノシュ・シュタルケル、ルドルフ・ブッフビンダーによるメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番を聴いている。これ、10日ほど前に買ったのだけれども、今日になって漸く再生した。買うペースが落ちると、のんびりと聴いてしまうのかもしれない。

録音は1973年5月、シュヴェツィンゲン音楽祭のライヴ録音をHansslerがCD化したもので、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第3番がカップリングされている。音質はステレオで、この時期のものとしては極めて良好だ。演奏会場はシュヴェンツィンゲン城。

この演奏、とってもいい。スーク&シュタルケルとなれば、そうそう変わった演奏にはならないことは容易に想像がつくけれども、このド直球な演奏スタイルを崩さずに、ライブならではの熱気を加えた聴きごたえのある演奏だ。1楽章冒頭から、「あれ?この曲ってこんなにもドラマチックだったっけ?」と曲に対する印象を少し見直させられる。そして、メンデルスゾーンのメロディ・メーカーっぷりがいかんなく発揮された第2楽章の美しさは別格だ。今や押しも押されぬ巨匠となったブッフビンダーもまだ27歳、まさに売出し中のころの演奏だが、この第2楽章でのピアノは素晴らしい。もちろん、スークの柔らかく端正な演奏も楽しめる。どっぷりとメンデルスゾーンの情緒を歌い上げてくれる。闊達な3楽章、切れ味の良い4楽章も好演。

当時全盛期だったスーク&シュタルケルに売出し中のブッフビンダーが絡むと言う、貴重な音源が素晴らしい演奏とともに、高音質で聴けるのはありがたい限りだ。



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ファルコニエーリと言う作曲家を聴いたのは、ダニエル・ホープの『バロックの旅』と言う企画もののCDに数曲収められていたのが最初だ。中でも、冒頭に収められていたチャッコーナは印象的で、何度も聴いた。結局、このチャッコーナは、ファルコニエーリの純粋なオリジナルではなく、当時の有名なメロディを用いたもので、バロック期の多くの作曲家がこのメロディを使って曲を作っていたのだが、この当時はそんな知識もなかった。

チャッコーナのことを色々と知るようになってくると、ファルコニエーリの名前はだんだんと頭の隅の方に追いやられていった。と言っても、忘れたわけでもなく、少しは気になっていた。

で、ある時、1枚のCDを見つけてしまった。『ナポリ王室楽長アンドレア・ファルコニエーリの第1曲集』と言う日本語タイトルが付けられたもので、原題は単にAndrea Falconieri  Canzone,Sinfonie&Fantasieとなっている。輸入盤なんだけれども、日本語訳をくっつけて、国内盤仕様、国内盤価格(涙)で販売してくれるマーキュリーの輸入販売によるもの。レーベルはPan Classics。演奏者は、アリアーヌ・モレット率いるアンサンブル・イザベッラ・デステ。20年ほど前に、スイスのベルン州にある教会で録音され、Symphoniaからリリースされていたものを、Pan Classicsが再リリースしてくれた。

さて、ファルコニエーリ。彼の生きた時代(1585年頃~1656年)は、ちょうどルネサンス期からバロック期に移行する時代だった。とは言え、ドイツ・バロック3Sと呼ばれた、シュッツ、シャイト、シャインと同じ頃に、バロック発祥の地、要するに音楽先進国だったイタリアで生まれたことを考えれば、初期とは言え、バロック様式の音楽を作っていたと誰もが思うだろう。実際、自身も多くのバロック音楽に接していた、と言う。

しかし、ここに聴くファルコニエーリの音楽は実に保守的だ。保守的、即ち、ルネサンス的である。ルネサンスが声楽の時代、バロックは器楽曲が飛躍的に発展した時代とみるならば、全曲、器楽曲のこの曲集は、如何にもバロック的なのだが、曲調があまりにも前時代的なのだ。

バロック音楽にありがちな喜怒哀楽は影を潜め、ややもすれば耽美的な形式美に捉われたようなルネサンス風の穏やかな音楽が多く、ふと16世紀の声楽曲を器楽曲に編曲したものを聴いているような錯覚すら起きてしまう。もちろん、ルネサンス期の音楽に比べれば、バロックらしい自由な音楽運びも聴くことが出来るが、裏を返せば、その程度のバロック感である。モンテヴェルディと同世代、或いはその少し後くらいの世代であれば、まだ、この過渡期的な響きは理解できるが、重ねて言うようだけれども、ファルコニエーリの時代でこれはどうなんだろう。

CDの解説によれば、これはファルコニエーリのいたナポリ王室に、その理由があると言う。

ナポリは当時、スペイン王室の統治する領土で、ナポリ准王が為政者として派遣されていた。しかし、ファルコニエーリが王室楽長を務めていた頃、既に落日にあり、王室では、古き良き時代のスペイン・ルネサンス様式の音楽が好まれた、と言う訳らしい。

この何とも言えない中途半端な音楽、それはそれで美しく、得も言われぬ高揚感のなさがとても落ち着いたものに聴こえるのだ。演奏も、瑞々しく、古楽の楽団らしいすっきりとした表現がファルコニエーリの音楽によく合っている。

一風変わったバロック時代を聴くことが出来る1枚だ。



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ヴァレンティナ・リシッツァと言うピアニストをご存知だろうか。youtubeに動画を投稿しながら、地道に活動していたこのピアニストが、録音の世界でメジャーの舞台に登場したのは、ヒラリー・ハーンの伴奏者として、ドイツ・グラモフォンにアイヴスのヴァイオリン・ソナタを録音したのが最初のようだ。2009年の録音で、2011年に国内盤がリリースされている。その後、リストの作品集やラフマニノフのピアノ協奏曲全集と言う大仕事をDECCAに残し、今日のピアノ界の檜舞台に一気に駆け上がってきた。

とは言え、ピアノ音楽にあまり強いアンテナを張っていない自分は、「名前くらいは聞いたことがある」程度の認識だった。こういう人の演奏を聴くきっかけは、よほど興味深い企画のCDが出たとか、或いは、どこかの演奏会でたまたま聴いたとか、そう言う何かがないといけない。

さて、こんなことをグダグダ書いているのだから、その「何か」があったわけだ。今回このピアニストを聴くきっかけとなったのは、面白そうなCDが出たから。マイケル・ナイマンのピアノ作品を集めた『Chasing Pianos』と言うタイトルの1枚が、それ。

ナイマンは現代音楽の作曲家の中では、人気のある方だと思うが、こうやって、正統派のピアニストが真っ向から取り組んでいる例はあまり多くはない。映画音楽が多いこともあって、どちらかと言うと大衆的な香りのする音楽だからだろうか。そんな訳で、今回のリシッツァの録音は貴重。

今回のプログラムは、映画『ピアノ・レッスン』からの作品を中心に、ナイマンが手掛けてきた映画音楽から選ばれている。有名な「楽しみを希う心」(『ピアノ・レッスン』)は、冒頭1曲目。ストレートに綺麗。高揚感を抑え、落ち着いたテンポで丁寧に仕上げている。盛り上がった演奏を聴きたいのならば、ピアノ協奏曲に編曲されたものがおすすめ。その他、「さよならモルチェ」(『アンネの日記』)、「シープ・アンド・タイズ」(『数に溺れて』)など、心にそっと沁み込んでくるようなメロディの曲は、深いことを考えずにその美しさを楽しむことが出来る。

逆に、「羊飼いに任せておけ」(『英国式庭園殺人事件』)、「ヒア・トゥ・ゼア」(『ピアノ・レッスン』)、「フライ・ドライヴ」(『キャリントン』)などの躍動感ある曲では、ナイマンのメロディを大切にしつつ、力強く歌い上げる。

「ジャック」(『ワンダーランド』)なんかもカッコ良くてお薦め。短い曲が多いが、その他にも佳作ばかりで、だらっと流しておくだけで、部屋の雰囲気が一気によくなる優れもの。下手なアロマセラピーより効くと思う(無責任)。

なお、リシッツァのyoutubeはこちらから。今回のCDの動画も見ることが出来る。なんかとっても、素人っぽい撮影だけど(笑)。こういう活動の仕方って、とっても今日的なんだけれども、やっぱり二番煎じは上手くいかないのだろうか。それともモデルになるのだろうか。

 

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