これまでイギリス音楽のCDを買うにあたっては、EMIのBritish Composers シリーズ、CHANDOS、hyperion、NAXOSの4つのレーベルがイギリス音楽ファンにとっての頼りだった。しかし!本命、と言うか、幻のように思われ、待望され続けていた伝説のレーベルがあった。Lyritaである。
イギリス音楽に特化したこのマニアックなレーベルは、ボールトを中心に、ハンドリー、作曲家の自作自演(ウォルトン、アルウィン、アーノルドなど)、ヨーヨー・マ、レッパードなどズラリと大物を揃えて滅多に録音されない珍曲を録音しまくっていた。その魅力たるや前述の4レーベルの何れをも遥かに上回るものだった。
ただ、このレーベル、その録音を販売することにそれほど意欲的ではなかった。そもそもイギリスのレコード店、WINDOWSによるレーベルで、あまり市場に流通させることを意識していなかったようだ。そのせいで、LP時代から入手し難い、入手できても高価なレーベルだった。
CDの時代になって、いくつかはCD化されたが、それはごく一部だけ。しかも、入手し難くく、高価と言う状況は相も変わらず。そして、あるとき「もーやめた!」と言って、オーナーが権利を抱えたまま、隠遁してしまった…。TASTEMENTをはじめいくつものレーベルが復刻のための交渉を行ったらしいけれども、何れも不調に終わり、LyritaのCDはamazonなどで、信じられないような高値が付けられるようになっていった。幸い、おいらはオーナーが隠遁する前のいくつかのCDを所有しているが、いずれも数千円の値が付いていた。下手すると1万円を超えるものも…。
それが、どういう風の吹き回しか、2、3年前に唐突に「復活するよー。しかも、LPで出ていたやつ全部CD化しちゃうよー」と言うことになった。イギリス音楽マニア、狂喜乱舞。Lyrita復活するならNAXOSなんて、買ってる場合じゃない!と言う運びになったんだけど、「でも、価格は据え置き!しかも、CD-R仕様よ?」ってことで、おいらは躊躇しまくっていた。軽くイギリス熱も落ち着いていた頃だったし。しかし、だ。このレーベル、いつ「やっぱやめた。じゃぁね!」と言うことになるか判らない。そこで、興味のあるものから少しずつ買っていくことにした。
まずは、PHILIPSのマリナー盤購入以降、歌曲以外でこれと言う録音のなかったフィンジを。ボールト&ハンドリーの指揮したものを中心に買ってみた。やっぱ、すげぇ!!「フィンジは寡作だからマリナー盤買っとけば、とりあえず、OK!!」って大嘘。名曲隠れすぎ。ピアノと弦楽合奏のためのエクローグや管弦楽のためのエレジー“落ち葉”なんて悶絶するほど美しい。これ聴かないでいいなんて話、あるわけない。こんな録音を残してくれていたLyrita、やっぱイギリス音楽ファンの絶対的神である。
そして…Lyritaのフィンジと言えば、ヨーヨー・マ&ハンドリーのチェロ協奏曲。あの、マである。実は、これマのデビュー盤なのだ。まさに幻の名盤と言われていた逸品。これも今回の復活劇で、陽の目を見るようになった。こんなんが出てくるんだから、もう、これからだって楽しみでしょうがない!!んだけど、どうも復刻は進んでいないように見えるんだが、気のせいか?「やっぱ、やーめた!!」になる可能性は相当大きいとは思っているが…。
ところで、手元の資料では、Lyritaはオリジナル音源は一切ない、と言うことになっているが、では、オリジナル音源はどこのレーベルに?確かに、イギリスのいちレコード店のプロジェクトとしてはあまりにも凄すぎるとは思うんだけど、オーナーが権利を独占的に持っていたりして、その実態は杳として掴めない。まぁ、いいか、伝説復活と言うことで、喜んで楽しんでいよう。
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