一般的なクラシック愛好家に猛烈に「邪道だよ!」と非難されそうな企画ものが好きである。例えば、ヤナーチェクの歌劇『利口な女狐の物語』をアニメ化したケント・ナガノのDVD。舞台上でハリボテ着ていい年こいた男女が、ピーチク、パーチクやっているのより全然面白かった。立派な絵本つきのスラットキンのチャイコフスキーの3大バレエは値段が高くて買わず終い。未だに悔やんでいる。結構高かったもんなー。味気ない廉価盤になっちゃってガッカリ。って、おいら、なんだか、商業戦略に乗っけられている感たっぷりだな。まぁ、面白ければいいんである。
つーこって、買ってみた。ラトルの『くるみ割り人形』(全曲)。声優さんが、ナレーション入れている盤。絵本つき。これは「ナレーションが邪魔くせー!」と言う決まりきった感想で終わることがあらかじめ決まっているようなもの。そんなわけで、発売がアナウンスされた時は「ほら、おいらクラヲタだから…音楽は音楽で純粋に楽しみたい」とか言って、このブログでも消極的な姿勢を見せていたが、まぁ、話のネタにでもなるかと、発売初日に買ってみた(←結構勢い余ってる(笑))。たぶん、この企画がなかったら、こんなベタなCDは買わなかった。あ、いや、最近、ネット見ていると一部の間でラトルの評判が芳しくないみたいだけど、おいらは嫌いじゃない。付録のDVDにつられて買ったブラームスの交響曲全集も悪くなかった。だけど、ね、メジャーレーベルが食傷気味な今日この頃。あまりにもマイナーレーベルが魅力的なもの出してくるもんで。
さて、内容なんだが、これ、結構、良いんじゃないか?以前、小澤&ボストン交響楽団のメンデルスゾーン『真夏の夜の夢』に吉永小百合がナレーションを付けたことがあった。図書館から借りて、少し聴いた記憶があるんだけど、まるで昔話を語っているかのようでつまらなかった。クラシック=古典と言う一側面だけをとらえれば、そう言う語り口もあるだろう。だけど、おいらはクラシックは歴史を持っていると言う意味では古典でもあるけど、今、活き活きと躍動している音楽だと思っている。だから、老人が子供に聴かせるような語り口調はただ退屈なだけにしか感じない。それでこそ、「ナレーション、邪魔くせー!」ってな感想。
今回の『くるみ割り人形』は、バレエ音楽に強引にナレーションを入れたと言う無理は確かにある。しかし、流石に声優さんはその道のプロなので、よく合わせている。吉永小百合みたいな退屈感はなく、この物語にあるファンタジックな面を強烈に意識させてくれる。女声の釘宮理恵さんの声はキューティフルでクララによくあっているし、男声の石田彰さんは、8人の役を演じ分けているんだが、これはこれで凄い芸当だ。釘宮さんの方も4人を演じ分けているんだが…あれ?クララがもう何人かいるぞ、と…。
ラトルの演奏は、ベルリン・フィルゆえ、ぼってりと重苦しくなってしまうんじゃないかと、懸念したけれど、杞憂だった。舞うような、とは言えないまでも、従来の輝かしい音色は損なわず、柔らかさも加わわり、十分楽しめるものだ。意外と歌心もあって◎。雪のワルツなんか、美しくって惚れ惚れしてしまう。以前から、ラトルの演奏って冷たさを感じることがあって、それがゆえに、魅力的だったり、なんか引き込まれない部分があったんだけど、今回の演奏は、それが幻想的な色合いになって、成功しているようにも思う。もちろん、各パートのソリストは、さすが、ベルリン・フィル、最強。
最後に、絵本なんだけど、中綴じの、まぁ、あんまりしっかりした作りとは言えないもの。おいら的には、なくても良かったかな。でも、子供を持つ親には良いかもしれないなぁ。CDそのものも子供から大人まで楽しめるものだし、クリスマスにはちょうどいい贈り物だ。子供のクリスマスプレゼントにゲーム・ソフトをプレゼントして、それから、ゲームばっかやっていないで、こんなものも聴いてみたら?と言って、このCDを渡してみるのもおしゃれでいいかもしれない。って、X‐BOXで戦いつつ、呟いてみる(汗)。あー、勝てねー。
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