久しぶりに神保町に行ってきた。なんか、とっても久しぶりだ。神保町と言うと、本の街=知性の街なんて言い方をされることがあるけど、裏を返してしまえば、オタクの街ってことでもあるのだ。クラヲタ的にも、なかなか魅力的な街なのだ。音楽書の類も良いんだが、マニアックなレコード屋さんも多い。フルトヴェングラーのサインが店頭に飾られていたり、CDでは見たことのないようなLPがとんでもない値段で売られていたりする。おいらの財布じゃ、逆に何もできずお金も減らなかったりする(笑)。
そんな神保町にいつの間にか、クラヲタ必見ポイントが一つ増えていた。ディスク・ユニオン神保町店になんと、クラシック・コーナー開設。…って実は、随分前に開設されたらしいんだけど、中古品には興味がないおいらは、まるで気が付かなかった。
狭いながらも(御茶ノ水店ほどではないにせよ)なかなか品揃えは豊富で、廃盤探しには期待できそうな予感。人が多く、商品の回転の速そうな御茶ノ水店よりは「残り物に福」がありそうだ。ちなみに、おいらは御茶ノ水店で目ぼしい廃盤CDを見つけたことがない。やっぱ、あれだけヲタが集結していると、それなりのものはあっつう間に消えてしまうんだろう。頻繁に通い詰めて、新入荷品をチェックしなくてはならない。こうなると店頭に並んでいるのは、普通にどこでも手に入るようなものがほとんどだ。しかも、廉価盤全盛の時代だけに、中古の方が新品より高い、なんて滑稽なことも頻繁に起こる。
さて、こんな風に新しい店舗を持ち上げたのは、目ぼしいものを見つけたからである。先日、このブログで記事にしたアーノンクールのモーツァルトの交響曲のうち廃盤になっている31番と33番のCDを見つけたのだ。あとは残念ながら見つからなかった。本来ならば、国内盤で出た中・後期交響曲集があればいいんだけど、そんな贅沢はなかなか言えない。ここは、まずもって、31番と33番だけでも、ぜひ聴いてみたかったので購入した。って、現役盤の38盤から41番の後期交響曲も買ってないのだが…廃盤って言うといきなり欲しくなったりするんだよね~。
購入したのは初期のTELDEC盤。お値段3,800円と書いてある国内盤。レーベル面にもMade in Japanと明記されているが、日本語解説はない。どういうことなんだろう?まぁ、要らないからいいけど。お値段は800円程度だった。少し気になったのは、PCに取り込めるかどうか、と言うところだったけれども、問題はなかった。
内容だけれども、期待通り、アーノンクールの音楽が溢れてくる。31番、副題『パリ』。モーツァルトの交響曲には他に『プラハ』、『リンツ』と、2つ地名の付いた交響曲があるが、何れも、そこで作曲したとか、その地のために作曲したとか、その程度の理由で、曲に強くプラハっぽさが出ているわけではない。ただ、『パリ』については、モーツァルトがフランス音楽界をリスペクトしていなかったからかもしらないが、モーツァルトらしい輝きがやや影を潜めているような気がする。駄作とまでは言えない、寧ろ、名作ではあるんだけれども、パリの聴衆へのウケ狙いを強調し過ぎた故の虚ろさを時々感じるような気がするのだ。まぁ、妙に好きな曲ではあるんだけどね…。
こういう曲は、ありきたりの演奏をされると、ホント、退屈になる。だから、アーノンクールみたいな個性の強い指揮者の演奏の方が面白いのだ。テンポは思ったほど(あくまでも、思ったほど、である)揺れないが、それにしても、色んな仕掛けをしてくる。もちろん、そこに不自然なあざとさはなくって、自然に刺激的なモーツァルトの音楽が紡ぎだされていく。ちなみに、『パリ』には第2版による第2楽章も付いている。研究熱心なアーノンクールらしいおまけだ。
33番は後期6大交響曲の前にあって、地味な存在だが、なかなか小粋で魅力的な曲だ。もし、「モーツァルトを聴きたいんだけれども、どの曲が良いか?」と尋ねられたら、ぜひ推薦したい曲の一つだ。有名曲ならではのマンネリ的な先入観もないし、モーツァルトの魅力を手短に味わえる。こちらもアーノンクールの演奏は素晴らしい。優雅にノリはしないが、鋭い切れ込みが耳に心地よい。こんな素敵なCDを廃盤にしておく、ワーナーって何なんだろう?
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