アーノンクール卿&ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの来日公演に行ってきた。80歳のアーノンクール卿、もう飛行機には乗りたくないから、最後の来日と言うことになるらしい。ちゅーこって、今日の演目は、セレナーデ第9番“ポスト・ホルン”と交響曲第35番“ハフナー”で、両曲とも知人への惜別の意がある曲とのこと。知らなかった。両方とも大好きな曲だし、モーツァルトの文献なら少しは読んでいるんだけどな…。それにしても、日本の皆さんにさようなら!ってプログラムなんて、粋じゃないか!1980年、2006年それに今回のたった3回しか来日公演をしていないので、そんな感無量じゃないんでは…とか言ってはいけない。
それはそうとして、演奏はとてつもなく素晴らしかった!つか、度肝を抜かれた…。緩急自在、休符でグッと止めたかと思うと、急加速…強烈なアゴーギク。無意識に体が反応しちゃいそうで、危なかった…。でも、これが、もう全然、不自然じゃない。もちろん、退屈と言うことでもない。刺激的で、鮮烈。おかしい…もうCDでアーノンクールの仕掛けには、慣れたと思っていたのに、まったくなすすべもなく、度肝を抜かれてしまった。あー、楽しい!楽しすぎる!
特に良かったのは、“ポスト・ホルン”。冒頭、行進曲K.335-1が入ったんだが、いつも聴いているマリナー盤も同じことをやっているので、あまりにも違和感なく…つか、気付かなかった(汗)。もう、おいらの中では、この曲は“ポスト・ホルン”の序曲と化しているのだな。
で、この序曲…じゃなくて、行進曲からして、おおっ!とアーノンクール節に引き摺り込まれてしまった。まぁ、いつも聴いているのが、マリナーってことであまりにも対極にいるような演奏なので、そりゃ、あまりにも刺激的だったわけだ。流麗なマリナーに対して、切れ味鋭く過激な表現のアーノンクール。あの綺麗に流れていく木管の掛け合いの美しい4楽章だって、淡々と進まない。急ブレーキと急加速で、斬新な味わい。楽団員も時々、ニコニコしている。それが、してやったり!って顔にも見えたり、楽しんでいるようにも見えたり…。あと、木管がモダン楽器の金管化してしまった木管より温かみがあって美しいんだよね~。たまらん…!!
終楽章もセレナードなのに壮大に締めくくってくれた。「アーノンクール?ああ、1950年代から活躍しているからね。当時は斬新だったかもしれないけど、今はあれじゃ、ぬるくって…。もう古いよねー」ってことにはならない。80歳過ぎているのに、まだまだ過激派路線を突き進んでいる。今聴いても、この人の演奏は、斬新なのだ。つか、他の人には真似できないのか…。兎に角、頑固爺っぽいけど、「今の若いやつらは…」と過去にしがみついて美化することはなさそうな…感じがする。
最後は、盛大にガッツポーズ。こんなノリの人だと思わなかった。写真を見る限りいつも怖そうな顔しているもんなー。
休憩をはさんで“ハフナー”。これもも良かった。40番が良いだの、41番が聴きたかっただのと言う雑音も聴こえてきそうだが、良いんである、“ハフナー”で。おいらが好きな曲だから(汗)。相変わらず、アゴーギク。アンサンブルが多少荒くなったって、気にしちゃいけない。だって、アーノンクール節が炸裂しちゃって、もう、凄いことになっちゃっているから!古楽器って音が小さくて、音量的には不利だと思っていたんだが、こう迫力ある演奏聴かされちゃうと「ごめんなさい、勘違いしてました」と頭を下げるしかない。
さて、最後の一音を盛大に鳴らし終えて…拍手!が、これがアーノンクールが望んでいたタイミングではなかった。と言って、「フライングだろ!拍手は手をおろしてからにしろ!」とも思わなかった。前の方の席だったんだけど、うーん…何となく、アーノンクールの動きが…「あ、まだおろしていなかったんだ」とおいらは思った。経験不足かもしれないけど、ね。アーノンクールも苦笑い。最後の最後で締まらなかった、って言えば、聞こえは悪いが、最後までアーノンクールのフェイントに振り回されちゃったんだな(汗)。
アンコールは、モーツァルトのドイツ舞曲K.571の第6番。ユーモアたっぷりに演奏して軽い笑いを誘ってくれた。ハイドンの告別やるかなーと思ったけど、それはベタ過ぎた…。それにモーツァルト2曲なんだから、アンコールだってモーツァルトだよなぁ、そりゃ。
終演後、サイン会。気合いだな。80歳過ぎて、海外公演こなして、その後にサイン会。大量に並んじゃって…そんなかの一人がおいらであることは、当の然。「サインと音楽は関係ねー」とか冷めたことは一切言わない。ミーハー?良いんじゃないか。一瞬とは言え、間近で憧れのアーティストと接することができるしね。ほかにも、色々考えはあるんだが、まぁ、サインは積極的に貰うようにしている。今回は、最後に「ダンケ・シェーン!!」と言ってみた。色々な思いを込めて。一瞥された…ちょっと頷いてくれたけど(照)。
まぁ、そんなわけで。素敵な最後の来日コンサートだった。満足、満足。
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