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今日の女流ヴァイオリニストの2トップ、と言うか、双璧をなす女王と言えば、アンネ=ゾフィー・ムターとヴィクトリア・ムローヴァだろう。この2人、いろいろ正反対な印象があるんだけど、古楽器演奏に対する考え方においては、徹底的に対立している。

カラヤンに重宝されたムターは古楽器演奏に対して「ばかげている」とまったく相手にしていない。それに対して、ムローヴァは積極的に古楽器奏者と組んで演奏活動を繰り広げている。否定派と肯定派…ってのもあるんだが、ムターはロマン派を中心に今のクラシックの王道レパートリーばかりを演奏しているのに対し、ムローヴァはムターのレパートリーに加えてゲンダイ音楽やバロックにまでレパートリーを広げている。結局、今日、広いレパートリーに挑戦するには、古楽を無視できない、と言うことなのだろう。その結果、ムローヴァは、ヴァイオリン曲の至高の芸術であるJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲を録音、絶賛を得た。対して、ムターはまだこの曲を録音していない。

と言うと、おいらはムローヴァ派でアンチ・ムター派のように見えてしまうんだが、そうではない。なんつっても…ほとんどムターの演奏を聴いたことがない(汗)。一度、CDショップでモーツァルトのヴァイオリン協奏曲集を聴いたが、これは実に素晴しかった。古楽器のアプローチとは正反対のものだけど、確りとして凛とした音色は見事としか言いようがなかった(と記憶している)。けど、なんだか、気乗りがしないで買わなかった。対して、ムターは生演奏にも接しているし、CDもいくつか持っている。

と言うわけで、どっちが好きと言う比較ができるほど知識はないんだけど、バロックのレパートリーにおいては、ムローヴァに分があるのは間違いない。その証明が無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータってことになるかもしれない。

さて、ムローヴァのバロック演奏のもう一つの成果と言えば、著名古楽奏者とのヴィヴァルディの演奏だろう。最近では、カルミニョーラ&ヴェニス・バロック・オーケストラとアルヒーフに録音したものが鮮烈な演奏として、高い評価を得ている。

その前には、イル・ジャルディーノ・アルモニコともヴァイオリン協奏曲集の録音を残している。これを最近ようやく、その存在に気付いて入手した。

これ…笑いが出ちゃうくらい凄い。前述のカルミニョーラとの演奏も活気があるんだけど、これは…そのはるか上を行く。むちゃくちゃ闊達。イル・ジャルディーノ・アルモニコは相変わらず、鋭く叩きつけるような演奏で容赦なく暴れまわっている。その中をムローヴァの美しい音色が切り裂いていく。ストラヴィンスキーやバルトークで聴かせるムローヴァとは少し違うが、これはこれで素敵だ。張り裂けるリズム、メロディ…熱いヴィヴァルディ。大爆走。しかし、これぞ、ヴィヴァルディの魅力、とも言えるんじゃなかろか。名盤。ちなみに、カルミニョーラとの共演盤では古楽器を使っているが、この盤は愛用のストラディヴァリウス・ジュールズ・フォーク。ただし、バロックのボウを用いて、弦はガット弦に張り替えている。

ところで、このCDの解説書を見たら、メンバ表が載っていたので、「どうせ、誰もわかんねーだろうな。あ、オノフリいるかな?」と思ってみてみたら、オノフリはいなかったけど、ミナジは在籍中。後に、ムジカ・アンティクァ・ローマを設立した若手ヴァイオリン奏者。古楽界の注目株。

 
mullova-vivaldi.jpg






 

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