イル・ジャルディーノ・アルモニコと言えば、イタリアのオリジナル楽器による暴走合奏団―と言うイメージなんだが、今日買ったCDは『聖母マリアの嘆き』と題したもの。暴走合奏団とは程遠い所にありそうな企画。このミスマッチの結果はどうなんだ…。
ところが、これが企画としても演奏としても素晴しい。収録されている曲は、ヴィヴァルディ、フェランディーニ、モンテヴェルディ、コンティ、マリニーニなどイタリア・バロックの作曲家たちによるお題に沿った作品。一応、イル・ジャルディーノ・アルモニコにとってはお国もの。彼らの演奏で定評のあるヴィヴァルディも良いが、つい最近までヘンデルの作品とされていたと言うフェランディーニの『マリアの悲しみ』が素晴らしい。多分、このCDのメイン。なんつっても、ジャケットにこのタイトルが書かれているのだから。
このフェランディーニの作品、ジャンルはカンタータ…あ、つうか、この企画、『聖母マリアの嘆き』と言うタイトルからして宗教曲ばかりっぽいけど、意外と器楽曲の割合が高い。で、これはカンタータ。歌手はベルナルダ・フィンク。古楽の世界で評価の高いメゾ・ソプラノだ。
曲は、カヴァティーナとアリアの合間にレチタティーヴォが挟まるスタンダードな形のカンタータなのだが、このカヴァティーナとアリアの祈るようなメロディの美しさには思わず涙腺が緩んでしまいそうになる。イル・ジャルディーノ・アルモニコのいつもの切れ味の良さは、抑制されて切々とした伴奏となっている。フィンクの歌唱も素晴らしい。特に2曲目"Se d'un Dio fui fatta Madre"と6曲目"Sventurati miei sospiri"がおいらは気に入ってしまった。一転して、レチタティーヴォは激しい嘆きの音楽となる。叩きつけるようなイル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏が、激情溢れて聴衆に迫ってくる。フィンクも遠慮なく激しく嘆きまくる。
この他の演奏も企画の良さも相俟って、とても充実している。特に、コンティの『聖ロレンツォの受難』は世界初録音と言うことで、一応このCDの売りらしい。そんなわけで、よく「アヴェ・マリア集めました。泣いてください!」って感じの企画はあるけど、収録曲を見ていただければわかる通り、このCDはそんな一筋縄でいくものではなくって、どちらかと言うと…と言うか、完全にマニア向けの内容。オムニバス的とは言っても、「バロック聴きたいんだけど…」って人にはお勧めできない。イル・ジャルディーノ・アルモニコの鋭い響きも一癖あるしな…。でも、ちょっとバロックを聴き始めたならぜひ聴きたいCD。おいら程度の古楽初心者でも十分楽しめるレベル。
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