フォン・ビンゲン生誕900年の1998年に結成された女性4人によるヴォーカル・グループ、カンティによるCDを買う。えっと、生誕900年…って凄くないか?900年前の歴史って多分、事実は不明。フォン・ビンゲンだって、ホントに1098年に生まれていたのかどうか。そんな、豪快に古い作曲家で、「生誕○○年!」なんてやっている作曲家ってほかにいるんだろか?モーツァルトの生誕250年が随分と最近のものに思えてくる。500年くらいまでやんなくてもいいんじゃないか?とか思えてしまう。
さて、それはともかく、カンティのCDである。タイトルは『カルミナ・ケルティカ』。ケルトをテーマにした企画で、サブ・タイトルに「中世と現代の祈りの歌」とあるように新旧の祈りの響きを追求したもの。レーベルはLINN。音質は、最強。
プログラムは、古いケルト音楽と、現代作曲家による祈りの音楽を交互に交えて作られている。ルネサンス以前の音楽に影響を受けた現代の作曲家ってペルトに限らず結構いて、彼らの作品とルネサンス以前の作品をプログラムに交えて企画を作ることって結構ある。なので、そう言う意味では、まったく斬新とは言えない。しかし、「祈り」をテーマにしたことが、吉となったのだろうか、見事に新旧の音楽がマッチしている。その響きは、果てしなく美しい。
エジンバラの教会で録音されているのだが、その残響に消えていく、ケルトの調べのなんと幻想的なことか。カンティの合唱の透明感は、LINNの優秀な録音と相俟って、聴く者の心の中に沁み込んでくる。カンティに限らず、ルネサンス以前の音楽を歌う人たちの高音って、全く耳触りではない。オペラでソプラノを聴くとき、慣れない人は、「キンキン声で耳触り」と言うし、おいらもそれは判らないじゃないんだけど、カンティの合唱が耳触りに感じる人はまずいないだろう。豊かに、清らかに響く、その調べを聴いていれば、心はシンと静まり、何かに祈りを奉げたくなるだろう。
合間合間に入るハープによるケルト音楽の響きも、ノスタルジックで良い。このCDに独特の味わいをもたらしてもいる。素敵なCDだ。
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