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映画『ラフマニノフ~ある愛の調べ~』を観てきた。亡命後のアメリカ時代と亡命前のロシア時代を行ったり来たりしながら、ラフマニノフの半生を描いた映画。約90分と言う短い時間にあらゆる「物語」を詰め込みすぎた感が強く、何かを示唆するような意味ありげな描写の一つ一つが、バラバラになって収集がついていないように感じた。伝記的な色も強く、観ている人の知識で物語を肉付けしていく必要がある―と言うわけでヲタ向け。ちなみに、おいらもラフマニノフの人生についてはそれほど詳しくないので、いまいちぴんと来ない部分が多かった。

タイトルを見る限り、恋愛映画っぽいんだけど、実は、それほどドロドロしたものでもなく、そう言う部分はあっさりと端折って描かれている。作曲家の苦悩に焦点が当てられていたのではないだろか。ラフマニノフの甘いメロディにつられて、甘い甘い恋愛映画を期待すると少し肩すかしを食う。

で、おいらがなぜこれを観に行ったかというと、作曲家の映画と言うことで興味があったのはもちろんだけど、ラフマニノフを演じている役者さんが、ラフマニノフそっくりだったのが気になったのだ。実際映画を観てみると容姿だけでなく、良い感じで無愛想キャラになっていて、これぞラフマニノフ!と思わせる演技。あーやだな、こんなやつと友達になりたくないな、とは思いつつも、一般的に知られるラフマニノフ像を見事に再現していることには感服。ライナーにちょっと意見されただけで「作曲者は俺だ!お前とは2度と演奏しねぇ!」とへそを曲げたと言うエピソードに見事に重なる。

あと良かったのは、ヲタ的な細かい部分。例えば、アメリカ中で演奏を続けるラフマニノフがコンサートの多さにうんざりしている場面で、前奏曲嬰ハ短調を弾いていたり、グラズノフが酔っ払いだったり、リムスキ=コルサコフの顔がそっくりだったり…そんなところ。物語にライラックの花が良く出てくるのは、ラフマニノフの演奏会には必ず謎の人物からライラックの花が届けられたと言う、史実に掛けたものらしい。おいらは知らなかった。知らないと、ライラックなんなのさ!って思ってしまうが、知っていれば、おお!ライラックとなっていたかもしれない。

簡単に感想を述べると、プログラムにも書いてあったけど、あまりこうした映像作品になりにくいラフマニノフの半生を映画化したこと自体には意味はあると思うが、恋愛映画としては期待するべきではない、と言ったところ。

ヲタじゃない人がこの映画を少しでも楽しむには…鑑賞前に700円出してプログラムを購入し、始まる前までにある程度、読んでおくこと。じゃないかな?

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