しばらくHMVのお気に入りリストに入ったままだったノイマンのドヴォルザークの交響曲全集(旧盤)をちょっと前に購入。国内盤ながら、7枚組4,000円台と、まぁまぁ、お買い得。さらに、マルチバイキャンペーンかなんかで、2~3割安かったので、「そろそろ買うか…」となった。廃盤になっちゃうとあれだしなぁ。
さて、ドヴォルザークの交響曲全集はこれが6種類目だが、まず比較するべきは、1980年代にデジタル録音で収録されたノイマンの新盤だろう。改めて、新盤を聴きなおしたわけではないが、まず結論から言わせてもらおう。旧盤を持っていれば新盤を買う必要はない、新盤を持っているなら旧盤を買うべき、と言うくらい圧倒的に旧盤に軍配が上がる。まぁ、個人の好みってそれでもあるとは思うんだけど、旧盤聴いてから新盤を聴けば、「ノイマン、老いたな…」と寂寥を感じずにはいられないだろう。もちろん、新盤でもそれなりに高い水準にあるのかもしれないが、老獪に過ぎる感があるのだろうか、旧盤の前では物足りない。
洗練と言う言葉は、一般的には褒め言葉であるが、この新旧比較をするにあたっては、決してそうではない。新盤の上品な響きは、ドヴォルザークのある種土俗的な魅惑を封じ込めてしまっているに感じる。これを洗練と言うならば、洗練と言う言葉は褒め言葉にならない、と言うことだ。対して、旧盤は上品と言う意味ではなく、土俗的な魅惑を活き活きと表現しながら、歌心を横溢させた美しい名演だ。テンポは遅めだが、弛緩して聴き手を退屈させることはない。むしろ、長くドヴォルザークの歌心に浸っていられると言う意味では、幸せなテンポである。
他の全集と比較しても、ノイマンの旧盤は優れた部類に入る。ドヴォルザークの交響曲全集と言えば、まず、クーベリックであって、まず、好奇心を持ってドヴォルザークのマイナーと思われる世界に一歩踏み込むには、この全集に手を出す人は多い。最強のブランドパワーを持つイエローレーベルだから、評論家のお勧めを含めて販売能力の高さはスプラフォンの遠く及ぶところではない。しかし、はじめてドヴォルザークの交響曲全集を買う人がスタンダードとしてまず手にすべきなのはノイマンの旧盤だ。ノイマンの旧盤を聴いた後に、クーベリック盤を聴くとベルリン・フィルの圧倒的なパワーが煩わしく感じてしまう。こういうのもありだとは思うが、正攻法で名演と言えばノイマンの旧盤なのだ。クーベリックについて言えば、若い時代を除き、老衰した最晩年まで、チェコ・フィルを振れなかったことは、大いに悔やまれるところである。
デッカから出ているロヴィツキ、ケルテスの両盤もノイマン旧盤より総合力で上回ることはない。メジャーレーベルと言うアドバンテージで、販売枚数は上回っているかもしれないが…。A.デイヴィス盤、それからまともな形で入手するのが難しいので全集では持っていないのだが、コシュラー盤は結構面白い…かな。チェコの指揮者では、ビエロフラーヴェクが先輩たちの偉業を恐れずに全集を作ってくれると面白いものができそうだ。BBC交響楽団との5番、6番のライヴ盤を聴けば、ほかの初期交響曲も聴きたくなる。
それにしても、これだけ色々な種類があるのに、ヴォーン・ウィリアムズまで録音したオランダの全集野郎ハイティンクが録音しなかったのはなぜだろう…?まぁ、あってもあんまり面白そうじゃないけど。
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