スラットキンが昨シーズンからデトロイト交響楽団の音楽監督を務めている。なんだかんだいって、やっぱアメリカの楽団にいる方が、ホッとする。イギリスに行っても、イギリス音楽も得意なはずなのに、アメリカ音楽の仕事ばかりやっていたし。
さて、そんなスラットキンの新譜。NAXOSから新しい相棒とのラフマニノフの交響曲第2番とヴォーカリースを収めた1枚が出た。NAXOSに移籍と言うと凋落したイメージが強いんだが、どうなんだろう?実力は確かなので、このCD大不況の時代にCDが出ている分には、有り難がってもいい。人気のあるハイティンクやC.デイヴィスですらオーケストラの自主製作盤くらいしか新譜が出ない時代だ。新譜どころじゃない指揮者だって、凄く多い。メジャーレーベルを支えていた、あの人とか、あの人とか…。
ラフマニノフは、スラットキンの十八番。セントルイス交響楽団の音楽監督時代にVOXに交響曲全集を録音して、マニアを唸らせたレパートリー。この録音で、スラットキン&セントルイス交響楽団のコンビは楽壇のメジャーになった、と聞いたこともある。アメリカ音楽&イギリス音楽が得意なスラットキンがラフマニノフ?と思われそうだが、スラットキンは亡命後のラフマニノフが過ごしたロスアンゼルスの出身。準地元の作曲家なのだ。意外と意外じゃない(変な言い回しだ(笑))。
そんなわけで、新譜は再録音と言うことになる。スラットキン&デトロイト交響楽団のラフマニノフと言う超メジャー級の録音と言うだけで「隠れた名演奏家を起用する」NAXOSっぽくないんだが、なんと、これライヴ録音でもあるのだ。NAXOSでライヴ録音って珍しいよなぁ。
で、演奏がこれまたいいのだ。スラットキンファンを自称しながらセントルイス交響楽団との旧盤を聴いたことがないんだが、これを聴けばついつい旧盤も聴いてみたくなってしまう。とにかく、カッコいい。やっぱ、スマート、都会的。徹底して。あー、これぞスラットキン!!甘いメロディをドロドロと分厚く熱く歌わせずに、スタイリッシュに仕立て上げる。スヴェトラーノフと対極にあるような演奏だ。1楽章のラルゴからアレグロに変わるあたりなんか、ホント、ゾワッとくるし、3楽章のアダージョも透明感があって、果てしなく美しい。
NAXOSから名曲の名盤が出てくる時代なんだなぁ。不思議な感じだ。
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