あのNAXOSが本を出している。その名もNAXOS BOOKS。海外のレーベルだからにして、基本、英文の本なのだが、有り難いことに、このたび、DISCOVERと言うシリーズが和訳され、新書版で学研よりリリースされた。このシリーズは、西洋音楽史をざっくりと追いかけたもの。Ⅰはバロック以前の音楽(中世&ルネサンス)、Ⅱはバロック、Ⅲは古典派、Ⅳはロマン派、Ⅴは20世紀音楽となっている。大まかに分けた西洋音楽史の5つの区分ごとに1冊を割り当てたかたちだ。ⅠとⅡは4月に出ており、ⅢとⅣがつい先日出たところ。Ⅴはないっぽい。無念。
おいらは、先日読んだ、『西洋音楽史』(岡田暁生著/中公新書/1995年)に続けて、西洋音楽史をも少し掘り下げて知りたくて、本屋をうろついて見つけた。『西洋音楽史』に比べて、単純に5倍のボリュームになったと言うわけではないが(DISCOVERシリーズは紙が厚く、画が多くページ数も少ない)、一つの時代に1冊割り当てているだけあって、入門書ながらそこそこ内容は濃い。音楽史だけではなく、音楽史に大きな影響を与えた政治的、宗教的な歴史も的確に紹介されている(『西洋音楽史』でも、もちろん書かれているが、より詳細である)。
さて、今、読み終えたのは、Ⅰ(『西洋音楽史Ⅰ』(ルシアン・ジェンキンズ著/小林英美、田中健次監修/松山響子翻訳/学研パブリッシング/2010年)。前述の通り、中世・ルネサンスの音楽がその対象。著者は古楽専門誌を立ち上げたり、オックスフォード大学で教鞭をとる古楽の専門家である。『西洋音楽史』の岡田暁生氏は特に古楽の専門家と言うわけではないので、一歩踏み込むと『西洋音楽史Ⅰ』に分がある。ただ、逆に専門家ではないが故に『西洋音楽史』の方が判りやすい一面もある。
内容について言えば、『西洋音楽史』でも著者が冒頭で主観性を否定しなかったが、『西洋音楽史Ⅰ』もただ客観的に音楽史を追っているだけと言うものではない。中世・ルネサンスと言う時代は古すぎるが故に謎めいた部分が多いが、そこに著者なりの客観的であったり、主観的であったりする考察を提示することもある。なるほど、古楽の専門家ならではの見識だ、と納得させられ、興味深く読み進めることができるのだ。そして、謎だらけだから面白い古楽の楽しみを教えてくれる。どんな楽器でどんな場所で、どんなテンポで演奏されていたか判らない音楽について、ワクワクしながら想像を巡らすと、音楽の楽しみの他に、歴史のロマンも感じることができるのじゃないか、と。
また欲しいCDが増えてしまうじゃないか!と文句も言いたい気分だ(笑)。
ちなみに、NAXOS BOOKSだけあって、音源の紹介も忘れていない。専用のホームページにアクセスして、パスワードを入力すると音楽を聴くことができる。下手にCDが付いていると邪魔くさいだけなので、有り難い方法だ。
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