クラシックと呼ばれるジャンルの音楽を聴き始めたころ、右も左も判らなかったおいらは、一冊の本を入手した。『世界のオーケストラ123』(音楽之友社編、音楽之友社、1993年)が、その本。大してオーケストラの名前も知らなかったおいらは、この本をバイブルに、様々なCDを聴き、コンサートに出かけた。
それから16年―音楽之友社は遂にこの本の後継版を出版した。『世界のオーケストラ名鑑387』(音楽之友社編、音楽之友社、2009年)である。掲載オーケストラの数を3倍にし、1楽団あたりの記載量を縮小した。「名鑑」の名を追加したとおりの変わりっぷりである。
削られた内容は写真、主席指揮者の変遷、客観的な沿革、本拠地ホールの座席数、公演スケジュール、近年の常連指揮者の顔ぶれと言ったところ。結構、ざっくり、削られた。お勧めCDは生き残った。いらねぇ、そんな執筆者の主観的なところは。しかも、この輸入盤全盛の時代に、お勧めCDは国内盤優先…。だもんだから、プラハ・フィルなんて輸入盤で結構色んなCD出しているのに、どえらマイナーなCDが掲載されている。大人の事情があるんでしょうね。
じゃぁ、買う価値はないかって?いやいや、387という数は伊達じゃない。今まで、詳しくは知らなかったオーケストラのことをざっくりとは言え、知ることができるのは、とても魅力的だ。例えば、ナショナル・フィル。よく聞く名前だけど、どういうオーケストラか知らなかった。この本を買って、録音専門のオーケストラであることを知った。また、輸入盤を買って、外国語表記がいまいち判らず「どこのオーケストラだろう?」と悩んだときにも役に立つ。一家に一冊は常置しておきたい本だ。
ところで、1993年の『世界のオーケストラ123』と2009年の『世界のオーケストラ名鑑387』では、オーケストラの勢力図もだいぶ変わっている。世界トップ10のオーケストラとして、詳しく紹介されたオーケストラは、2楽団が入れ替わっていた。ボストン響とクリーヴランド管が一つ下の扱いになったのに対して、ミラノ・スカラ座フィルとドイツ・カンマーフィル・ブレーメンが入った。
はい、そう。
「えーーーーーーーーーーーー!!!!?????」
ミラノ・スカラ座のオーケストラはオペラを演奏するときは、ミラノ・スカラ座管弦楽団、オーケストラ・コンサートをするときは、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団を名乗っているけど、やっぱオペラ・オーケストラとしての色が濃すぎる。交響曲、管弦楽曲のレパートリーが広いというイメージはない。トップ10と言うなら、それなりのレパートリーの広がりは欲しいところだ。オペラ・オーケストラの代表ってことで入れたいんならウィーン・フィルとシュターツカペレ・ドレスデンが入っているのでもう十分かと。実力的にもトップ10に入るようなオーケストラではない。黒いものを感じる。
ドイツ・カンマーフィル・ブレーメン…近年、録音も増え、一気に成長して来たオーケストラだな、と言う印象はあった。でもね、カンマーだよ?室内管弦楽団なのだ。レパートリーの幅は自然と狭まる。今回の版では室内オーケストラも掲載してくれたことは、大変嬉しいことなんだけど、トップ10はフル編成で固めるべきだろう。
それと、これだけ録音のライブラリーが増えた現在、今の実力だけではなく、過去の栄光も鑑みなければ、過去の録音に対して、誤った評価をしてしまいかねないので、注意が必要だ。
…というか、トップ10とか、メジャー50とか、そういう格付け自体やめたほうが良いと思う…。
[0回]
PR