チェーザレ・シエピ、逝去。享年87歳。
初めてオペラというものを観たのは、クラシカ・ジャパン(今は入会していない)で、観た『ドン・ジョヴァンニ』だった。フルトヴェングラーの指揮が目的で観ていたんだけど、タイトル・ロールを歌う歌手に強烈に惹かれてしまった。それがシエピだった。素晴らしい歌、素晴らしい演技…カッコよかった。ちょい悪オヤジじゃなくて、悪の権化、インモラルの具現をこれほどまでにカッコよく演じきって、しかも、すっごく痺れる歌声だった。特に地獄落ちの場面。古い映像なのに古臭さを超越して、壮絶な映像、音声だった。それまで、「歌で劇なんて、ワケわかんねーよ」と思っていたおいらの常識を見事にひっくり返してくれた。恩人。
その後、それほど、シエピをターゲットにCDを買い集めることはなかったけど、好きな歌手の一人であるには違いなかった。
今日は、デ・サーバタの指揮で歌ったヴェルディのレクイエムを聴いてご冥福をお祈りすることにしよう。
…にしても、何年か前にシュワルツコップが亡くなった時も思ったんだが、歌手は指揮者と違って、活躍していた時代と亡くなる時代がもの凄く離れてしまうので、なんか、妙な気分。変にメランコリック。リアルに聴いた世代ではないのに、「あー、あの人も逝ってしまったのか…」と。
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