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来年はカラヤン生誕100年。んでは、カラヤン、買いまくりますか!って気分にならないのはなぜだろう?おいらの最初に買ったクラシックのCDはイ・ムジチのモーツァルト、その次に買ったのが、カラヤンのモーツァルトの交響曲だった。入門者には、優しい…と言うか、とりあえず、最初のうちはどの演奏者がいいか解らないからカラヤン買っとけ~ってノリだ。だから、CDで一番長く付き合っている演奏家は、イ・ムジチ、次いで、カラヤン。食傷気味ってのもあるのかもしれないけど、ある程度CDを聴いていると、もうカラヤンはいいかな?って気分になった。よく言えば、スタンダード、絶対的存在。悪く言えば、定規的演奏家。没個性的ではないが、もっと色んな演奏家を聴きたくなると自然と疎遠になる存在。そして、いつか戻ってくる人は戻ってくる。その時にカラヤンの個性を見出すのだ。

じゃぁ、世間一般の流れはどうかって言うと、やはり影は薄くなってきていたように思う。いかにせん、新しい録音が出てこない。最近は、古いライヴ録音が出てきているが、そんなものなくても、後年の高音質の録音が大量に残されているのだから、他の演奏家のものに比べれば断然、意味レス。だからかどうか、放送音源なんかの復刻も断然少ない。それとマルチ・プレイヤーだったことも、何気にマイナス。最近はどうも、スペシャリストがもてはやされる傾向にあるように思うから。

総じて、一言で言ってしまえば、伝説性がないのだ。フルトヴェングラー、トスカニーニは、古いがゆえに録音が満足ではない。C.クライバーは、演奏したくないから録音が少ない。チェリビダッケは録音嫌いだから録音が僅少だった。ムラヴィンスキーは鉄のカーテンの向こうにいた。そういうシークレットが多いほうが、大衆は魅惑される。シークレットを覗こうと躍起になって、少しでも覗けると、実力以上に賛嘆する傾向がある。

だから、チェリビダッケの没後、大量のライヴ録音が出回ったとき最初は、みんな飛びついたが、今はどうだろう?定盤に定着しているCDは一枚でもあるだろうか?チェリビダッケは、それはすばらしい指揮者だった。だけど、シークレットがその魅力の幾割りかを占めていたことも事実だろう。だから、唐突に多くが明らかになったとき、我々は演奏云々以上になんだか拍子してしまったのだ…多分。

さて、カラヤン。この人は、生前から自分の演奏を広めることに全力を尽くしていた。そして、自分を売ることに長けていた人物だ。それだけにシークレットな部分は少ない。自分のいいところは全てPRするべきだという一般社会では「当たり前のこと」を着実に実行した。「演奏したくねー」とか、「観客は嫌いだー」とか、駄々をこねないし、「録音なんて、音楽の本質から外れる」と言ったゴタクも並べなかった。そして、文句ばっかり言っている奴等を尻目に伝説を捨て、スーパー・スターにのし上がった。

換言すれば、芸術主義より商業主義的な人物だ。しかし、カラヤンのこうした行動は、カラヤン自身どれほど意識していたか知らないけれども、クラシック音楽の普及活動に大きく貢献したのだ。超高水準の録音を市場にどんどん供給していった。その効果たるや絶大。没後も『アダージョ・カラヤン』等の企画CDでヒットを飛ばすなど、クラヲタよりは一般市民に影響を及ぼしている。そう、彼は指揮者では超異色のポピュラーな演奏家だったのだ。

そのことを証明するようなアンケートがある。―20世紀最高の指揮者は?→1位 フルトヴェングラー、20世紀最高の演奏家は?→1位 カラヤン。出展は失念してしまったが、彼の存在意義を如実に語る面白いアンケートだった。

さて…来年は、気軽にカラヤン、聴いてみますか。

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