チョン・ミュンフン…じゃないや、チョン・ミョンフンとチェコ・フィルのブラームスの交響曲第4番がCD化された。これ、このコンビの来日公演に合わせて急いでリリースされたたCDなんだが、肝心の来日公演が大震災の影響で全部ではないがほぼキャンセルとなった。EXTONは目論見はずれちゃったわけなんだが、これ、記念盤で済ましちゃうにはあまりにも勿体ない代物だ。SACDとは言え、1曲で2,800円とはあまりにも割高ではあるけれども、それを補って余りある。
…って、これ、おいらが2月にプラハで聴いたコンサートのライブ録音なんだけどね。ミョンフンが素晴らしい指揮者であると言う認識はあったけれども、「チェコまで行って、アジア人かぁ。ビエロフラーヴェク聴きたい…」なんて思いながらも、日程的に他に目ぼしいコンサートがなかったので、消去法的に取ったチケットである。
それが蓋を開けてみたら、どうだ?やっぱ凄い指揮者は凄いんである。オーケストラを煽りに煽って、恐ろしく情熱的な音楽を作り上げていく。この手の演奏は、下手すれば、がなり立てるだけの中身は空っぽの虚ろな爆演になりかねないが、そこんところきちんと弁えて、理性も知性も失わないのはさすが。特に3楽章から4楽章にかけての強力な推進力には聴衆を有無を言わさず呑みこんでいく魅力がある。圧巻。ティンパニの強打も効果的。もうね、容姿はこういっちゃなんだが、背が低くて顔のでかい、貧相な指揮者なんだけど、演奏中と演奏後はどんな韓流スターよりカッコよく見えた(あ、そもそも韓流…まるで興味ですけどね)。
で、オーケストラが、もう、流石としか言いようのない音色を出してくれるんだな。1楽章始まった瞬間に「うわーっ、綺麗だー!」って感動しちゃう。繊細で堪らなく美しい。その後も柔らかくふくよかでたーっぷり鳴り響く。2楽章で聴く、弦も鳥肌もの。あ、気持ち悪いってことじゃないっすよ?上質なシルクのような響きっつーのかな、ありきたりな表現を使わせてもらえば。やっぱチェコ・フィルの弦の響きは、最高級。もちろん、木管人の響きも、金管の響きも…あの美しいチェコ・フィルの音色。最高なのだ。ミョンフンもそこんところ良く活かしていて、全曲通して熱狂的ながら実に美しいブラームスになっている。もちろん、ライブならではの緊張感もあって、最上の演奏になっている。もう、むちゃくちゃ酔える。
この演奏が震災の影響で日本で聴けなかったのは、あまりにも惜しい。自分がこの演奏会を生で体験したことは、すっごい体験だと思うし、今思い返しても頭に血が昇るくらいテンションあがるけど、日本で演奏されなかったことは、あんまりにも惜しくてならないのだ。行く予定はなかったけど、もっといろんな人に聴いて欲しい演奏だった。ミョンフンの情熱とチェコ・フィルの美しい響きがあわさるとこんなにも凄い音楽になるんだと多くの人知ってもらいたいという思い。
せめてCDが売れればいいんだけど…値段がなぁ。しかも、ミョンフン&チェコ・フィルってこれが初共演なんだけど、あんまインパクトないんだよね。「あれ?今までも何度も見たような気がするけど…」って感じで。世界中の名門オーケストラを振っている指揮者と、世界中の名指揮者を指揮台に迎えている名門オーケストラの組み合わせってそんなもんかもしれない。もっとも、プラハでは、「ミョンフンがチェコ・フィル振るよー」って宣伝があちこちにしてあったけど。
そんなわけで、超お勧め。個人的にはコンサートの後に行ったピザ屋が思い出されてならない…。あれ、でかかったなぁ。
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