佐渡裕、ベルリン・フィル、デビュー。興味ないなら書かなきゃいいんだが、なんだか、話題になっているようなので書いておこう。
興味ないっつーのは、何かって言うと佐渡裕がダメだから聴かないってことじゃなくって、殆ど聴いたことがないから何とも言えないってレベル。どっかで映像を観たことはあったような気がするけど、あんまり印象は残っていない。
では、世間一般の評価はどうなんだろうか、とHMVのレビューをみてみてびっくり。ここまで叩かれている指揮者ってのも珍しい。同国出身者を低く評価する同族嫌悪っつうのかな、そう言うのって、ないとは言えないかもしれないが、大野和士や大植英次はきちんと評価されているんだからそれだけじゃないんだろう。ただ、どうしたわけか、吹奏楽の録音はやけに評価が高い。若し聴いてみるなら、吹奏楽からどうぞ、ってことなんだろうか。
うーん…と思ってみていて、「これは…」とすぐに違和感を感じたのが、レーベル。Avex Classics。なんじゃそりゃ。だいぶ前に、Avexがクラシックに進出したって話があったんだけど、結局、目ぼしい録音は出せていないと言うイメージだった。それが、こんなところで細々と生き残っていたとは。
で、Avexの何が疑問かって、録音技術。やっぱり、HMVで評価をしている人の中にも、これを指摘している人を見かける。オーケストラを録音するにはあまりにも経験不足ではないか、とはすぐに思ってしまう。Avexと言えば、国内のポップスではどメジャーな存在かもしれないが、クラシックに入って行けば、旧6大メジャーや個性的なマイナーレーベルたちの中で埋没しかねない存在だ。クラシックのレーベルはharmonia mundiなら古楽、ERATOならフランスもの、NONESUCHなら現代音楽と言う風に得意ジャンルの録音技術に磨きをかけ、小うるさいヲタクたちの支持を得てきた。その中で、音楽的に存在価値を示すことは、確りとした技術力と明確なコンセプトがなくては難しい。
しかし、ものは考えようである。Avexの強みと言えば、ポップスで培ってきたマスコミへのPR手法(ってのかな?)。これを使わない手はない。今回の件だって、「こんなニュースになるか?普通…」ってのが正直な感想だ。ベルリン・フィル振ったからと言って、偉大な先輩である若杉や小澤、朝比奈と同等の評価ができるわけではない(ちなみに、ベルリン・フィルを振った日本人は14人目らしい)。正直なことを言えば、最近のベルリン・フィルを振っている面子を見ると、巨匠不足の裏返しで斬新っつうか、まぁ、ひと昔前のベルリン・フィルなら絶対出てこないような人がちょくちょくいる。ピノックとか、アイムとか…。佐渡裕とは違って全くベルリン・フィルに憧れていなかった人たちである。ベルリン・フィルを振ることのハードルが下がったってわけじゃないかもしれないが、ベルリン・フィルも色々と試してみるんだなぁ…ってのが、最近の印象。
それよかベルリン・フィルで言えば、安永徹に続いて、樫本大進が、コンサートマスターの座を射止めたこと、清水直子がヴィオラの首席になったことだって、日本人には嬉しいニュースのはずだ。それと東日本大震災へのチャリティーコンサートなんかも本来はニュースにして欲しいところだ。なのに佐渡裕ばっか。Avexの力じゃないかなぁ、ってのは穿った見方だろうか。
こうして、ニュースで話題を作っておいて、それだけで終わらず、すぐにCD化、民放でドキュメンタリ放映をする。次々と大衆にPRしていく。もともとのクラシック・ファンにはそれほど売れないだろうが、マスコミの作り上げた流行に“流行りものに敏感な大衆”が飛びつくだろう。Avexの真骨頂だ。で、それが悪いことかと言うとそうではないと思う。のだめ効果が薄れてきた今日、クラシック普及のためのこういう広告塔は大切だ。理由は何だっていい。ニワカだろうが、なんだろうが、それで確り、クラシック・ファンが増えて行けばそれでいいんである。
ただ、残念なのは武満とショスタコーヴィチと言う演目。流行りものに飛びついた大衆が楽しめる演目じゃございませんね。新世界とかやっときゃよかったのに…。非クラヲタは「自分の知っている曲」が好きだからなぁ。
さて、佐渡裕、今後どうなるのやら…ベルリン・フィルの常連になって、ウィーン・フィルやコンセルトヘボウに登場するようになっていけば、本物なんでしょう。おいらは、ほかに聴きたい演奏家が多すぎるので財政的に試しにCD買って聴いてみるかって余裕はないけど、同じ日本人としては頑張って欲しい。
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