音楽紀行後記、あんまだらだら続けていてもしょうがないので今回が最後。今回は音楽的な感想を。
えー、まず変なところだけど、チケット代金から。音楽の都、ウィーンの演奏会は高いなぁ。ウィーン・フィルの定期演奏会の定価が既に1万円オーバー。もちろん、定価で買えるはずもなく、仲介手数料だの、プレミアだのが付いて、倍額ぐらいになったりする。ムジークフェラインの前で開演前に売っているチケットなら、定価くらいで買えるそうだけど、それが目的で行って、一か八かってのも…。ウィーン国立歌劇場も公演によりけりだが、20,000円前後が普通かな。要するに、おしゃれ感覚で高尚なクラシック様を嗜むには少々きつい街だ。演目も覚えていないような旅の思い出に投資できる金額じゃない。なのに、ウィーンと言えば音楽とばかりにツアー客がわんさかいる。もちろん、観光用のコンサートなら安くてあるかもだけど、たぶん、学生オケレベルと覚悟しておくべき。
それに対して、ドレスデン、プラハは馬鹿みたいに安い。チェコ・フィルが約3,000円、ドレスデン・フィルが約3,500円、シュターツカペレ・ドレスデンが約6,000円。チェコ・フィルなんて、来日公演20,000円もするのに!観光と合わせ技で音楽も楽しみたいってレベルならプラハが最強であることは間違いない。
値段はさて置いといて、音楽の水準だけど、さすがにどこの都市も超一級だ。ドレスデン大空襲のメモリアルな日に聴いた、プレトニェフ&シュターツカペレ・ドレスデンのドイツ・レクイエムは、妙にリアルな環境と相俟って、腹にズドンと来るような衝撃があったし、チョン・ミュンフンとチェコ・フィルのブラームスの交響曲第4番は凄まじい気迫で圧倒され続けた。ウィーンでは、ブロムシュテットの骨太のベートーヴェンとツェートマイアーの斬新なヴァイオリンの響き、そして、ビシュコフの壮大なマーラーの交響曲第6番を聴いた。その他の公演も素晴らしいものばかり。まぁ、本拠地ホールで聴いているってだけで、こっちもフワッフワになっちゃうんだけどね。
観衆は既に、マナーをテーマに書いたんで、端折るけど、なんか、音楽を自然に受け入れている感じがする。あの空気が好き。老夫婦が寄り添いながら、階段を時間かけて1段1段登って演奏会にやってくる。席について、目を瞑って音楽を楽しむ…その風景。幸福の象徴みたいな映像だ。ファッションも無駄に頑張っていなくて、それでいて会場に溶け込んでいる。高尚でお洒落な場所じゃなくて、もっと自然な音楽の空間。音楽はお洒落なものじゃなくて、あくまでも楽しむべきもの。感じるもの。そうであってはじめて、存在価値があると思う。
またいつか、この音楽の空間に身をゆっくり置きたいものだなぁ~、と願いつつ、平常に戻っていく。
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