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パドモアの『ウェンロックの崖で』
2013/10/06 (Sun)
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マーク・パドモアの新譜を買う。このテノール歌手は、古楽系とドイツ・リートを得意としているが、ありがたいことに近代イギリス歌曲も十八番にしている。今回の新譜も近代イギリス歌曲を中心にしたプログラム。以下の通り。
ヴォーン・ウィリアムズ:『ウェンロックの崖で』
ヴォーン・ウィリアムズ:『ブレイクの詩による10の歌』
ドーヴ:ジ・エンド
ウォーロック:『タイシャクシギ』
共演は、ジャクリーヌ・シェーヴ指揮ブリテン・シンフォニエッタ。彼らとは、以前、フィンジの『降誕祭』をリリースして好評を博している。レーベルは共に、ハルモニア・ムンディ・フランス。センスのあるジャケットも好印象。
さて、今回のCD、ほかも魅力的なんだが、メインは何と言っても、『ウェンロックの崖で』だろう。ヴォーン・ウィリアムズの歌曲の中でも、最も演奏頻度が高い名曲だ。パドモアも得意としているらしく、これが2度目の録音となる。
イギリスの近代作曲家の多くが、曲を付けたハウスマンの詩集『シュロプッシャーの若者』の詩によるもの。たぶん、ヴォーン・ウィリアムズのこの曲がこの詩集による最初の歌曲だと思う。淡々とした中に、仄かに混ざる不安や哀愁がとても綺麗な音楽だ。
パドモアの歌唱は、感情移入をし過ぎることなく、鮮明にヴォーン・ウィリアムズの歌心を描き出していく。その無駄な力の抜けた響きは、曲の持っている流れに身を任せるように、次の曲、そのまた次の曲へと進んでいく。パドモアの歌を聴いていると、この曲の持っている本来の美しさとか、ハウスマンの描いた「若者」の様々な感情とかが、幻想的な雰囲気をもって、今この空間を満たしていくようだ。これはもう流石としか。
ほかの曲も、良いと思う。ちなみに、ドーヴは、現代の作曲家。それと、『タイシャクシギ』は、ウォーロックの歌曲の中でも、有名な部類だと思う。近代イギリスの歌曲なので、ドイツ・リートのようなドラマチックな展開やメロディーはないけれども、静謐な世界を楽しみたい方には、お勧めできる一枚。パドモアのような売れっ子がこういうレパートリーを録音してくれると、以前からのファンとしては、一気にメジャーに駆け上がった気がして、何となく嬉しい(笑)。
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【CD&DVD雑記】
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