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ヤルヴィ(次男)のカルミナ・ブラーナ
2012/09/17 (Mon)
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13世紀、日本では鎌倉時代、西洋音楽史的には、ルネサンス音楽の登場までに100~200年もの長い長い年月を待たねばならない中世音楽の時代。この時代の世俗的な詩集が、ドイツ南部バイエルン州のボイレン修道院から見つかった。1803年のことである。この詩集には、ネウマ譜によるメロディが付されている詩がいくつかあり、20世紀後半、その復元に古楽演奏家が挑戦した。中でも知られているのが、ルネ・クレマンチッチとクレマンチッチ・コンソートによる録音だろう。活き活きとしたリズムの中に、古の時代の若者たちの怒りや欲望が混沌と渦巻いている様は、人間臭くて生命感に溢れている。
で、この詩集をもとに、20世紀の作曲家、カール・オルフがカンタータに仕上げた。ま、これの方が有名だし、いちいち語るほどもない名曲だろう。1曲目と終曲の「おお、運命の女神よ!」は様々な場面、例えば、格闘家や野球選手の登場シーンなんかでも使われているので、多くの人に知られている。録音も多くって、古くはヨッフム盤が、最近のものでは、プレヴィン盤が名盤として知られている(のかな?)。ドロドロとしたリズムとメロディが躍動する、不気味テイスト満載の曲だと思うんだけれども、プレヴィンは随分とすっきりとした新しいタイプのカルミナ・ブラーナを聴かせてくれた。
名曲だけあって、プレヴィン以降もハーディング、ラトル、ティーレマン等、有名演奏家がCDをリリースしている。どれも評価は高い。イメージ的には、ドゥダメルなんかも録音しそうだ。
さて、そんな新しいカルミナ・ブラーナにもう1つユニークな新盤が加わった。クリスチャン・ヤルヴィ&MDR交響楽団がソニーに録音したもの。クリスチャン・ヤルヴィは、以前もこのブログで紹介したことがあるけど、ネーメの次男、パーヴォの弟。ビッグネーム2人のプレッシャーは…全く感じさせない独自の活動に好感が持てる。MDR交響楽団は、中央ドイツ放送交響楽団のこと(はず!)。昔は…東ドイツ時代は、ライプツィヒ放送交響楽団と名乗っていた楽団。ケーゲルとかシェルヘンとかアーベントロートとか…古い録音に詳しい人ならお馴染みの楽団だろう。クリスチャンは、今シーズンからこのオーケストラのシェフに就任。ライプツィヒのもう一つのオーケストラに期待が集まっている。
カルミナ・ブラーナの録音は、就任の前に録音されたものだが、就任披露コンサートでもこの曲が披露されると言う。クリスチャンの指揮は、無駄な贅肉が落ちたような筋肉質の演奏だ。ドロドロした不気味成分は、控え目。スマートで先鋭的。一つ一つの楽器が確り聴こえてきて、グチャグチャしないすっきりした演奏だ。現代的。1970年代には、絶対演奏されないタイプの演奏だ。「天秤棒に心を掛けて」でのソプラノの独唱も十分に美しい。Venus!Venus!と叫びながら、終曲に突っ込めば、テンションも上がろうと言うもの。
ヤルヴィ(次男)、今後も、新譜のリリースが楽しみな指揮者だ。もっと名門楽団との共演も聴いてみたいけれども、やりたいことがやれるオーケストラで好き勝手しているのも、悪くない。自己が確立される前に、有名楽団の指揮台に上がり過ぎると実力はあっても、案外、無難なところに収まってしまう可能性がある。ハイティンクなんか、コンセルトヘボウの呪縛が解けたのは、1980年代も後半になってからじゃないだろうか。そう言う意味では、有名どころを振りまくっているドゥダメルがちょっと心配。
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