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アルビカストロと言う謎の作曲家
2012/07/20 (Fri)
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最近、お気に入りのヴァイオリニスト、リッカルド・ミナジ。手元にまたひとつ興味深い録音が届いた。エンリコ・アルビカストロなる作曲家の4声の協奏曲集作品7を収めた2枚組で、共演はコレギウム・マリアヌムとコレギウム1704。
まずは、エンリコ・アルビカストロ。バロックはマニアックな作曲家の宝庫である。バロックの時代はモンテヴェルディからJ.S.バッハまでざっと150年ほど。この長さ、ピンと来ないと思うけど、例えば、今から150年前がどんな時代だったか考えると実感がわいてくる。2012年-150年=1862年。生麦事件のあった年であり、森鴎外の生まれた年である。そんな長い期間があれば大量の作曲家がいたはずと言うのは容易に想像がつこうというものだが、知られている作曲家はごく一握りだ。一般人が知っているレベルだと、J.S.バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディくらいなものか。アルビノーニ、パッヘルベルは1曲だけで知られているだろう。それだけである。100年しかないロマン派・国民楽派の作曲家であれば、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、マーラー、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、メンデルスゾーン、シューマン、ショパン、リスト…枚挙にいとまがない。何百年も聴かれ続ける作品を作曲しようとしたロマン派の作曲家とそれ以前の作曲家を比較するのは、どうかと思うのと同時に、古典派、バロックにマニアックな作曲家が多くなり、ロマン派、国民楽派の作曲家は割とメジャーになるのは、しょうがないと言うことも理解しておく必要があるだろう。それに、時間とは残酷なもので、どんなに当時一世を風靡していても、300年と言う長い時間が、ものの見事にマニアックにしてくれるのだ。
アルビカストロもそんなバロックの作曲家の一人。インターネットで調べても、さほど詳しいことは出てこないが、幸い、今回買ったCDには輸入盤ながら、日本語の解説が付いている。これによれば、1661年にバイエルンの小さな村に生まれたと推測されている。両親はスイス人。アルビカストロと言うイタリア風の名前は、ハンドル・ネームらしい。バロックの音楽界はイタリア最強だったので、それに合わせたのだろう。本職は、軍人でスペイン継承戦争にも騎兵隊長として参戦していたという。軍人で作曲家と言えば、リムスキー=コルサコフを思い浮かべるが、アルビカストロについては、それほど詳しいことは判っていない。没年は1730年と推測されているが、作品の殆どが1701年から1706年のわずかの間に出版されている。と言っても、この時期だけ作曲をしていたわけではなく、この時期に集中して出版したと言うことらしい。今回の作品7も1704年に出版されているが、作曲されたのは17世紀のうちだと推測されている。それでも、本職が軍人と言うこともあり、現存する作品は多くはない。当時、流行していたオペラの作品もない。
作風は、CDの帯にも紹介されているように、コレッリの影響を受け、ヴィヴァルディの先駆的な感じのもの。作品7は12曲で構成されるが、その殆どがコレッリの用いた緩急緩急の4楽章である。この時代の器楽作品におけるコレッリの存在感は相当大きなものだったらしく、当時多くの作曲家がコレッリ風の作品を出版したらしい。アルビカストロもその一人であるが、時折、そんな時代の流れに逆らうような表情を見せる。と言っても、おいらはさほどにコレッリの作品を知っているわけではないけれども。
ミナジの演奏は、ヴィヴァルディを演奏している時に比べると、穏健。曲のせいだろうか、ホールのせいだろうか。共演者のせいだろうか。2000年の録音なので、22歳くらいだと思うが、当時既にイル・ジャルディーノ・アルモニコに参加していたわけで、エキサイティングな演奏には慣れていたと思うんだけれども。それでも、スピードの速い楽章を小気味よく駆け抜けていく様は実に爽快だ。ゆっくりした楽章でも、第4協奏曲のアダージョなんかは実に美しい。モダン楽器でロマン派風にやったらアルビカストロはとても退屈な作曲家かもしれないが、この演奏であれば飽かず、十分に楽しませてくれる。マイナーな作曲家でこれだけの高水準の録音があるのはありがたい限り。
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【CD&DVD雑記】
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