ヴァイオリン界の巨星、ヨゼフ・スーク逝去。81歳だったそうだ。既に引退はしていたものの、一時代を築いた巨匠の訃報は一つの時代が終わったようで一抹の寂しさを感じざるを得ない。それが、自分の世代とずれていたとしても、である。
個人的にスークの生演奏には接したことはない。世代が若干ずれているとは言え、生演奏に接する機会はあったのだが、引きこもってスルーしてしまったことは、未だに悔やまれるところ。実は、好きなヴァイオリニストだったので、積極的に聴きに行くべきだったなぁ。
古楽器全盛の今日においては、時代遅れに聴こえるかもしれないが、折り目正しく、端正な演奏をしてくれる演奏家だった。音色は、チェコのヴァイオリニストらしく、温かみのある優美で柔らかいもの。華美なものではないが、ホッとするような心地良い響きがあった。
これからはもう、録音でしかこのスークの響きを楽しめないわけだが、バロックを含めて名盤が多いので、今後もスークのヴァイオリンは音楽好きの中で響き続けるだろう。中でも評価が高いのが、ドヴォルザーク。何つっても、お国ものだ。それどころか、血縁もの。同名の作曲家ヨゼフ・スークはドヴォルザークの娘婿にあたる。要するに、スークはドヴォルザークの曾孫にあたる。スークにとっても他のヴァイオリニストには絶対負けられない作曲家だと思う。
様々な曲の録音が残されているが、中でも有名なのは、ヴァイオリン協奏曲だろう。おいらが最初に聴いたのは、サージェント&BBC交響楽団との共演盤。歌心溢れる美しい演奏だった。まだ若いころのライヴ録音で気合も十分。ただ、録音がいまいちなのが残念なところ。そして、今は廃盤になっていて入手は困難。安定的に評価が高いのはアンチェル&チェコ・フィルとのスプラフォン盤だろうか。同コンビとの共演ではザルツブルク音楽祭のライヴもオルフェオから出ているが、残念ながらモノラル録音。より音質を気にするならば、後年のノイマン&チェコ・フィルとの演奏もいいと思う。アンチェル盤にばかり目が行きがちだが、こちらも素晴らしい演奏だ。ファーストチョイスならこちらを推したい。
スークの録音でもう一つ特筆したいのが、小品集のものだ。お国ものを含め、小品集の録音は素晴らしいものが多い。と言うわけで、哀悼の意味も込めて、今は、LOTOSから出ているロマンティック・ヴァイオリンと言うCDを聴いている。3巻まであるので、小品集とは言え、ボリュームたっぷり。引退間際の演奏だが、温かみのある美音は健在。有名曲の間に、J.ベンダやスーク、クーベリックと言った祖国の作曲家によるあまり知られていない作品が差し込まれているのも嬉しい。LOTOSのCDは日本では入手し難いが、プラハに行く機会があったらお土産に是非。
最後に…素晴らしい音楽を残してくれた偉人に感謝と深い哀悼を表します。
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