と言うわけで、このテーマのCDを1枚紹介しよう。タイトルはPer Monsieur Pisendel。そのまま訳せば、「ピゼンデル氏のために」となるのだろうか。HMVでは、「ムッシュー・ピゼンデルが弾くために」となっている。まんま、上記のテーマに当てはまるタイトル。サブタイトルに、Six Virtuoso Violin Sonatas of the Baroqueとなっている。作曲家は、ヴィヴァルディ、アルビノーニ、そして、ピゼンデル自身である。ヴィヴァルディの作品は、“ヴィヴァルディからムッシュー・ピゼンデルのために”と言う一文が付された、RV.6とRV.2のソナタである。アルビノーニの作品は、So.32とSo.33のヴァイオリン・ソナタで、こちらにもピゼンデルのために作曲した旨、一文が付されている。これに加えて、ピゼンデルの2つのソナタ、それからヴィヴァルディかピゼンデルのどちらかが作曲した、ヴァイオリンと通奏低音のためのサラバンドが収められている。ピゼンデルを満喫するには最高のメニューだ。
2曲目はThe Photography of Chance。2004年の作品。ユタ州の大自然を称えるために作曲したということ。うーん、大自然ねぇ、これが。ヴァイオリンがか細く囁く様は、仄暗く寂しいアメリカの田舎町の日暮れ時を思い出させる。雄大な音楽でなく、アメリカの大自然を表現しているという意味では斬新なのかも。
最後は、Time Will Pronouce。1992年の作品。このCDの作品の中では一番古いもので、20世紀の作品。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に由来している曲。ヴァイオリンが悲痛に響き渡る。テンポが速くなっても、ナイマンの軽快さは、冷たく、音楽を奏でていく。ふと、ライヒのDifferent Trainsを思い出させる。