プルハール&ラルペッジャータの新譜『束の間の音楽』を聴いている。「束の間の音楽」と言うのは、パーセルの劇音楽『オイディプス王』の中にある曲のタイトル。と言うわけで、今回はパーセルの作品集。サブタイトルに“Improvisations on Purcell”とあるように、即興性を重視した音楽作りを目指したCD。バロックの「自由さ」を徹底的に活かしていくプルハール得意のお題だ。本来意味しているところとは違うとは言え、このCDに『束の間の音楽』と言うタイトルはぴったりだ。このタイトルを見ただけで、期待が高まってしまう。
さて、1曲目、’Twas within a furlongが流れ出して、ふと思う、「あれ?ジャズのCD買ってしまったかな?」と。軽快なギターに続いて、カウンターテナー登場。相変わらずのノリの良さ。そして、自由(笑)。バロック×ジャズてな感じ。あれ?これってクロスオーバーじゃないのか?と定義付けたくなっちゃうんだけれども、本人たちはそんなこと気にしないで、「楽しければいいじゃん!」と音楽を楽しんでいるように聞こえる。
3曲目のStrike the violもノリノリだ。愁いを帯びた古雅な響きが、スタイリッシュなカッコいい音楽になる。原作改編だ!なんて言うと、プルハールに余裕の笑みを返されそうだし、パーセルには、「いいんじゃない?」と言われそう。とても違和感がないし、パーセルの魅力を充分に引き出している。バロックって、下手にお堅くやればやるほど、魅力が失せていくし、本来持っている音楽の力が無くなっていくように感じる。パーセルの提供してくれたネタをもとに、あれやこれやと今風のテイストを交えながら楽しい音楽を作り上げていく。バロックの醍醐味だ。