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ヴァレンティン・シルヴェストロフを聴く
2011/11/01 (Tue)
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ピアノ曲をあんまり聴くことがなくなった。理由はわからない。古楽を聴く割合が増えたからかもしれないが、ロマン派の作品もよく聴くので、多少は聴いてもいいようなんだが…。
って状況が続いていたんだけど、最近、とあるピアノ作品をよく聴いている。シルヴェストロフのピアノのためのパガテルと言う曲だ。
シルヴェストロフは1937年生まれのウクライナの作曲家。シュニトケやグヴァイドゥーリナと同世代のロシア系作曲家同様、当初は前衛的な作品を作曲していた。しかし、色々あって1970年代後半ころから作風が変わり、美しい曲を書くようになった…とざっくり言うとこんな感じの作曲家である。
ピアノのためのパガテルは作曲家が70歳近くになった2005年に作曲されたもの。美しい静寂が仄かなノスタルジーを感じさせる作品だ。癒しと言えばそうなんだが、そんな陳腐な言葉で片付けるにはあまりにもったいない。ポロリ、ポロリと弱音で弾かれるそのメロディは、それぞれの人の心の中にある、懐かしい景色を幻想的にぼかし、理想的な風景を思い起こさせてくれる。ラフマニノフのように強烈に迫ってくるわけではないので、夜ふと目を閉じると、まるのでその景色の中に迷い込んだような錯覚を覚える。現実のものとは思えないような、透明感のある世界へと誘われていく。
21世紀にこの音楽は凄い。第1次世界大戦を契機にロマン派が崩壊し、試行錯誤が続いた20世紀後半の音楽シーンから、こんなにも独特な世界観を持った作曲家が現れるとは。ただし、これが大きな潮流になることはない。これはシルヴェストロフであってそれ以外ではあり得ない。20世紀から21世紀、混沌の音楽の時代にそっと出てきた美しい副産物なのかもしれない。もっと、出来ればピアノの作品を聴いてみたいな。いや、しばらくはピアノのためのパガテルを聴き続けておくか。
なお、聴いているCDは作曲家自身の演奏のもので、ほかの録音は今のところなさそう。カップリングは弦楽合奏のためのいくつかの作品で、こちらも素敵なものだ。作曲年代は全て2000年前後のもの。作曲家70歳の記念にリリースされたものだそうだ。演奏はポッペン指揮ミュンヘン室内管弦楽団。レーベルはECM。透明感と綺麗な残響ある録音でシルヴェストロフの美観を堪能できるもの。ECM特有のモノトーンなジャケットも音楽にぴったり。
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【CD&DVD雑記】
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